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低GI 高蛋白ダイエットの減量維持効果について [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は胃カメラの日なので、
カルテの整理をして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日は食事療法についての話題です。

11月25日付のNew England Journal of Medicine 誌に、
「Diets with High or Low Protein Content and Glycemic Index for Weight-Loss Maintenance 」
と題する論文が掲載されました。

これはヨーロッパで行われている、
Diogenes 研究という、
大規模な食事療法の臨床研究の中間報告です。

どういうものかと言うと、
BMI 27以上という肥満の方を対象にして、
まず8週間低カロリーのダイエットを行ないます。
1日の摂取カロリーは800~1000キロカロリーです。

このダイエットにより、
平均で11キログラムの減量効果が得られています。

問題はこの後です。

超低カロリーを長期間維持することは、
健康上望ましいことではありません。
そのために、低カロリーの期間は8週間で終了し、
その後は原則としてカロリー制限は行ないません。

しかし、それでは間違いなくリバウンドが起こり、
体重は元に戻ってしまいそうです。

それでこの研究では、
カロリーは制限しない代わりに、
食事の内容に制限を加えます。

1つはGI(Glycemic Index グライセミック・インデックス)です。

この数値については、
皆さんの方がおそらくよくご存じかと思います。

糖質の吸収のされ易さを示す数値で、
この数値が高いほど、
食後の血糖値は一時的には上昇し、
インスリンもより多く分泌されます。

たとえば、主食でも、
白米はGIが高く、
それに比較すると玄米は低GIです。

従って、白米より玄米の方が、
同じカロリーを摂取しても、
食後のインスリンは上がり難いのです。

今回の研究では低GIの食事と高GIの食事を設定し、
どちらがリバウンドが起こり難く、
ダイエットの減量効果が持続し易いかを検討しました。

もう1つの指標は蛋白質の量です。

全体のカロリーの25%を蛋白質にした、
高蛋白群と、
カロリーの13%を蛋白質にした、
低蛋白群を設定しました。

この2つの指標がそれぞれ掛け合わされるので、
コントロール群を含めて、
5種類の食事のパターンに、
被験者は割り付けられます。

つまり、
コントロール群以外に、
高GIで高蛋白の群と高GIで低蛋白の群、
そして低GIで高蛋白の群と低GIで低蛋白の群の4種類です。

この状況で26週間(半年ですね)後に、
それぞれの群での体重の増減と健康状態、
ダイエットからのドロップアウトの率を、
それぞれ検討しました。

すると…

高GI低蛋白の群が、一番リバウンドの率が高く、
平均で1.67キログラムの増加が認められました。
そして、低GI高蛋白の群が、
もっともリバウンドが少なく、
むしろ体重はより減少しており、
更にはドロップアウトも一番少なかったのです。

この結果は何を意味しているでしょうか?

脂質の量は総カロリーの25~30%で固定され、
総カロリーは変動はあるものの、
概ね2000~2500キロカロリーくらいです。

従って、低GIで高蛋白にすると言うことは、
必然的に炭水化物の摂取カロリー自体も、
減るということになります。
つまり食事成分的には、
高蛋白で低炭水化物にし、
消化吸収になるべく時間が掛かる食品を、
主体にする、という意味合いです。

ダイエットが失敗してリバウンドが起こるのは、
精神的な要因と生理的な要因によると考えられています。

精神的な要因は、
十分に食べられない、
と感じることのストレスです。

生理的な要因は、
低カロリーを続けることにより、
身体が飢餓時の代謝にスイッチし、
エネルギー消費が低下することです。

こうした状態の時に高GIの食品が入れば、
インスリンが上昇し、脂肪化し易くなるのです。

従って、ダイエットの維持には、
低GI高蛋白食が理に適っているのです。
インスリンは上昇しにくくなるので、
脂肪が蓄積しにくく、
また消化に時間が掛かり、
空腹感が生じにくいのです。

ポイントはカロリー制限がない、ということです。
それでも8週間の低カロリーの時期を経ているので、
「好きなだけ食べていいよ」と言われても自ずと抑制が掛かり、
総カロリーは2000キロカロリー前後になっているものと思われます。

今回の結果をどう考えるべきでしょうか?

低GI高蛋白が、常に正しい処方であるとは、
言い切れないと思いますが、
少なくとも、低カロリーでのダイエットで、
体重を減らした後の維持期の食事療法としては、
理に適ったものだと思います。

欧米の食事指導の考え方は、
特に肥満に対してという限定で考えると、
かなりこうした方向にシフトしている印象で、
日本の特に糖尿病の食事指導と比較して考えると、
実際にはかなりの乖離があると思います。

一方で極端な低炭水化物ダイエットを、
糖尿病の患者さんで推進される先生などもいて、
本来こうした肥満の食事指導と、
糖尿病の食事指導とは、
分けて考えるべきものの筈ですが、
現実に日本では糖尿病の食事指導の延長で、
肥満の患者さんの栄養指導も行われている実態があるので、
問題は非常に複雑で混乱を招くものになっています。

こうした点については、
またもう少し勉強した上で、
今後記事にしたいと思います。

今日はダイエットについての海外の文献のご紹介でした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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