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二次性骨粗鬆症の鑑別診断と保険診療の問題点 [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

朝からレセプトのチェックなどして、
1年分の薬がまとめて切られたのに呆然として、
やる気を失いつつ、
それでも今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日も骨粗鬆症の話です。

骨粗鬆症には、
加齢や女性ホルモンの低下に伴うものと、
それ以外の原因によるものがあります。

加齢や閉経後の骨粗鬆症を、
原発性骨粗鬆症と呼び、
それに対して他の病気による骨の量の減少を、
二次性骨粗鬆症と呼んで、
その両者を区別するのが一般的です。

厳密に言うと、
基本的には正常の構造の骨が、
その構造は保ったまま減少するのが、
骨粗鬆症です。

何故こんなことを言うかというと、
骨の構造がうまく出来ないタイプの病気もあるからです。

その代表は骨軟化症という病気で、
これはその名の通り、
カルシウムをしっかり含む、
硬い構造の骨が出来ずに、
脆い骨が出来てしまう、
という病気です。

その多くは先天的な素因によるもので、
骨の成長がうまく行かないために、
お子さんの時期に診断が付くことが殆どです。

ただ、軽症であると診断のつかないケースもあり、
その場合は骨折が起こり易く、
骨密度を測定すると低い値になるので、
原発性骨粗鬆症と誤診されることがあります。

現行の骨粗鬆症の診断は、
骨密度の測定のみで行われることが多く、
ガイドラインでも「二次性の骨粗鬆症を鑑別せよ」
と書かれてはいますが、
実際にはその診断は不十分なことが多いと思われます。

ただ、骨粗鬆症の治療ガイドラインというのは、
あくまで原発性の骨粗鬆症に限った話で、
同じ治療を二次性の骨粗鬆症にそのまま適応すると、
却って患者さんに不利益が生じる事態にもなりかねません。

原発性骨粗鬆症の治療の第一選択薬は、
ビスフォスフォネート系の薬剤ですが、
これは骨吸収は抑えますが、
骨形成を促進することはありません。
従って、骨の破壊が亢進した原発性の骨粗鬆症には、
適した薬剤ですが、
その一方でビタミンDが不足して、
骨形成が低下したような病態では、
むしろ骨を脆くする方向に、
働いてしまう可能性もあるのです。

実際先日ご紹介した海外の総説では、
ビタミンDの欠乏症と骨軟化症、低カルシウム血症は、
ビスフォスフォネートの禁忌と書かれています。

しかし、ビタミンDの欠乏の診断には、
食事由来のビタミンDを反映する、
25(OH)Dという数値の測定が必須で、
海外の総説にもそのように書かれていますが、
この検査は実は健康保険では測定が出来ません。

何故二次性骨粗鬆症の鑑別に重要で、
治療方針の決定にも必須の検査が、
保険適応されないのでしょうか?

こうした点に、
僕は日本の健康保険診療の、
大きな問題があると思います。

本来骨粗鬆症のような病気の診断と治療は、
もっと緻密であるべきです。

骨密度が減少する原因は、
骨粗鬆症ばかりではないからです。

しかし、現実には診断のために必要な検査は、
最小限しか認められず、
それでいて高価な薬剤を使用した治療には、
殆ど何の制限もないのです。

慎重な診断にはそれだけ検査の費用は掛かるかも知れませんが、
結果として治療の対象はより絞り込むことになり、
不要な投薬は行なわれなくなります。

つまり、結果的には医療費の節約にもなる理屈です。

しかし、ジェネリック薬品の推進でも分かるように、
むしろ薬はジャンジャン使う方向に誘導がなされています。
別にジェネリックを使わなくても、
不要な投薬が減れば医療費の削減になるのです。

しかし、そんなことを言う人は誰もいません。

骨粗鬆症の治療に限定して言えば、
ビスフォスフォネートのような高価な薬剤は、
その必要性が高い患者さんに、
限定して使用するべきだと僕は思います。
骨のミネラル量が減少する原因は様々です。
従って、そのメカニズムをはっきり検討した上で、
その原因に合った治療を、
費用対効果も合わせて選択するべきで、
「取り敢えずビスフォスフォネート」というのは、
あまり適切な治療方針とは言えないと思うのです。

皆さんはどうお考えになりますか?

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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くみちょう

こんばんは。
一年前まで遡って査定されることもあるんですね、驚きました。
妥当な処方であれば再請求することもできると思うのですが、
現実は難しそうですね。
by くみちょう (2010-12-04 22:51) 

fujiki

くみちょうさんへ
コメントありがとうございます。
ケアレスミスで、
病名が洩れていたのは確かなのですが、
数ヶ月分ならともかく、
1年前に遡ってまとめて切って、
その分がまとめて引かれて来るので辛いです。
せめて2~3ヶ月後くらいには、
査定されて来るのであれば、
こちらも気がついて翌月から修正出来るのに、
敢えて意地悪をされているような気がします。
院外処方なので、
完全な赤字です。
患者さんにとって、
間違った薬を出している訳ではないので、
やる気がなくなります。
医療機関側は期限付きで、
レセプトを出さないといけないのに、
チェックする側は1年分溜めていても、
何のお咎めもないのですから、
理不尽な思いがします。
by fujiki (2010-12-04 23:09) 

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