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おたふくかぜワクチンを考える [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は胃カメラの日なので、
カルテの整理をして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日は以前も取り上げた、
おたふくかぜワクチンの話です。

おたふくかぜは、
医療用語としては、
流行性耳下腺炎と呼ばれ、
ムンプスウイルスというウイルスによる感染症です。

感染すると耳の下が腫れて、
食事をしたり顎を動かしたりすると、
強い痛みを感じます。高熱の出ることもあります。

この病気はお子さんでは概ね軽症ですが、
稀に脳炎や難聴を生じることがあります。
脳炎の比率は1000人に3人から5000人に1人程度の確率で起こり、
難聴は200人に1人から1万人に1人と、
その報告にはかなりのばらつきがあります。
髄膜炎は10人から100人に1人と非常に高率ですが、
殆どは軽症に終わります。

大人になってから罹ると、
男性では2割から4割という高率で、睾丸炎が起こり、
精子数が減少することが知られています。

さて、この病気の予防には、
ワクチンが使用されています。

欧米ではMMR ワクチンと言って、
麻疹と風疹とおたふくかぜのワクチンが、
混合されたものが主に使用されていますが、
日本では現在、
国産のおたふくかぜ単独のワクチンのみが、
許可されて使用されています。

この理由は何故かと言うと、
以前にも記事にしましたが、
国産のMMR ワクチンが、
副反応の多さから製造中止となったためです。

その主な副反応は、
おたふくかぜワクチンによると思われる、
無菌性髄膜炎の発症です。

ワクチンは1989年に接種が開始され、
4年後に中止されましたが、
その4年間に行政の資料によれば、
死亡一時金受給者3名、障害児養育年金4名、
医療費医療手当1032名と報告されています。
もとより全ての被害にあった方が、
申請を受理される訳ではありませんから、
これがかなりの規模の被害であったことは、
皆さんもお感じになると思います。

この被害事例は、
基本的には全て無菌性髄膜炎です。

そして、その原因がおたふくかぜワクチンにあることは、
「おたふくかぜワクチンに関するファクトシート」
にもはっきり書かれています。

問題は、
それが製品の管理上の杜撰さから来たものではないのか、
というニュアンスが、
ファクトシートにも書かれている、
ということが1つと、
基本的に当時と同じタイプの、
おたふくかぜワクチンが現在でも使われており、
かつMMRワクチン使用当時よりは少ないながらも、
無菌性髄膜炎の副反応を、
今も発症し続けている、
という事実がもう1つです。

MMR ワクチンの無菌性髄膜炎の発症頻度は、
1200人に1人程度と公式には発表されています。
そしてよく引用されている2007年のデータでは、
現行の単独おたふくかぜワクチンの、
無菌性髄膜炎の発症頻度は、
2000人に1人です。

ただ、無菌性髄膜炎の多くは軽症なので、
一時的な嘔吐や発熱の症状が出ても、
おたふくかぜワクチンとの関連を考えなければ、
「ああ、風邪ですね」で済んでしまいます。
従って、実際の頻度はこれよりかなり多いことが、
推定されます。

これが世界のどのおたふくかぜワクチンでもあることなら、
まあ納得がいきます。

ところが、世界で最も広く使用されている、
Jeryl-Lynn 株というウイルス株を利用した海外のワクチンでは、
10万人の接種でも0~1人しか無菌性髄膜炎の報告はありません。
RIT4385 株では10万人当たり0人(!)、
Leningrad-3 株でも167万人当たり1人です。
ただ、海外のワクチンでも、
数千人に1人の発症のあるものもあり、
ワクチン毎に差の大きなものであることは分かりますが、
それにしても国産ワクチンの頻度は異常です。

僕の手元にある「予防接種に関するQ&A 集」には、
無菌性髄膜炎の症状は軽く、後遺症は残りません、
と明記されていますが、
現実にMMRワクチンでは健康被害や後遺症が出ているのですから、
何故そんなように簡単に断言出来るのか、
その記載には疑問が残ります。

素朴に考えて、
海外のワクチンで殆ど報告のない副反応が、
日本のワクチンでのみ高率に認められるのなら、
国産のワクチンは使用せず、
輸入すればそれで問題はなさそうです。

実際、海外のMMRワクチンの輸入申請が、
化血研(!)の手によってなされていて、
今後導入される可能性があります。
ただ、勿論海外で問題がなくても、
日本での接種で問題の生じる事例は、
これまでにもあり、
輸入ワクチンを使用する方が確実に良いかは分かりませんが、
おたふくかぜワクチンに関しては、
もっと早期にこうした検討が行なわれるべきだったのではないか、
と僕は思います。

それでは今日のまとめです。

おたふくかぜワクチンの接種後、
2~3週間後に発熱や頭痛、嘔吐の症状があれば、
ワクチンの副反応による、
無菌性髄膜炎の可能性があります。
これは現時点で日本のワクチンのみに発症の多い、
それでいて何ら対応策の取られていない副反応です。
この病気は、思春期以降の感染では、
特に男性で睾丸炎が問題となり、
ワクチン接種の有効性はありますが、
多くは不妊に至ることはなく、
それ以外の重篤な合併症の頻度は、
極めて稀なものです。
(難聴のみは統計により差が大きく、
断定的には言えません)
ファクトシートによれば、
この病気での最近の死亡事例の報告はありません。
従って、このワクチンの接種に関しては、
そうしたリスクを考慮したうえで、
慎重に判断するべきだと僕は思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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ma-bo

こんにちは。

ちょっと教えていただきたいことがあります。
先日、13才になる息子の予防接種に行った病院で、現在までにおたふくかぜにかかっていなければ、2回目のおたふくかぜ予防接種を受けるようにすすめられました。
息子は、10年ほど前におたふくかぜの予防接種を受けています。

以前、先生のトピックスでおたふくワクチンについて書かれていたのを思い出し、再度検索して読ませていただきました。

思春期以降にかかると不妊症になると思っていましたが、必ずしもなるわけはなさそうですね・・・
でも、もう13才ですし、少し心配しています。

世間的には、2回接種が主流なのでしょうか?

もし、現在までに症状が出ない状態で感染していて、しっかり免疫がついていた場合、そこにワクチンを入れてしまったら、副反応がひどくでたりする可能性はありますか?

すみませんが、よろしくお願いします。



by ma-bo (2012-08-28 14:19) 

fujiki

ma-bo さんへ
こうした副反応はその接種毎に独立して生じると、
考えて頂いて良いと思いますので、
特に免疫が充分にある状態で接種をしても、
それで強くなることはないと思います。
ワクチンの免疫は長期的には低下しますが、
その間に当該のウイルスとの接触があれば維持されます。

不要な接種のご心配があるようでしたら、
事前に血液で抗体価を測定して、
下がっていれば追加接種するのが、
僕は適切ではないかと思います。
by fujiki (2012-08-29 08:14) 

ma-bo

お忙しい中、お返事ありがとうございます。

早速、先ほど帰宅した息子に、血液検査したいんたけど・・・と言ったら、すごい勢いで拒否されてしまいました。
血をとるくらいなら注射がいいと・・・(笑)

でも、先生のおっしゃる通り、不要なワクチンは避けたいと思いますので、何とか説得して、抗体検査をしようと思います。

そこで、ひとつ質問です。
現在息子は13才ですが、抗体検査はいくつくらいで行うのが適当だと思いますか?

10年前は、終生免疫だから、一度接種すれば大丈夫!と言われて受けたのですが・・・
予防接種だけで免疫をつけるのは難しいのですね。





by ma-bo (2012-08-29 16:08) 

fujiki

ma-bo さんへ
これは特に基準はありません。
感染のリスクなどを考えた上で、
すぐでも良いですし、
高校、大学くらいの検査でも、
決して悪くはないと思います。
by fujiki (2012-08-31 08:14) 

まめ

こんにちは!以前の記事にコメントさせていただきすみません。
こどもが生まれおたふくワクチンについて悩んでいます。
今のところは輸入mmrワクチン(priorix)をうつことがいいのではと思っています。
2022年になり、輸入のmmrワクチンはどうなっているのでしょうか?
国内ワクチンのほうがいいのでしょうか。
よろしくお願いいたします。
by まめ (2022-02-19 11:01) 

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