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「ラクメ」のベル・アリア [コロラトゥーラ]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は日曜日で診療所は休診ですが、
集団健診の診察があるので、
7時には出掛けます。

今日は休みなので趣味の話題です。

デセイ様の最盛期の歌唱を、
you tube からのよりすぐりの画像でご紹介します。

何と言っても最高なのが、これです。

これはフランスオペラ、ドリヴの「ラクメ」より、
コロラトゥーラのアリアとして、
リサイタルなどでも歌われる、
ベル・アリア、「鐘の歌」です。

これは一時代前のソプラノ、
マリア・カラスやジョーン・サザーランドなども、
歌ってはいますが、
オペラの実演自体は非常に珍しく、
1995年から1997年に掛けて、
デセイ様が何度かフランスで上演し、
非常な話題を集めたものです。
97年に全曲版の録音がCD発売されていますが、
その後はデセイ様自身、このオペラを歌ってはいません。
日本では数年前にスロヴェニアの歌劇場の来日公演として、
上演された以外には、抜粋の上演しかありません。
その舞台は僕も聴きましたが、
あまりレベルの高いものではありませんでした。
タイトルロールはデジレ・ランカトーレです。
まあ、大舞台ではイマイチのソプラノですね。

この画像は1995年のクレジットがありますが、
どうやら海賊版のようです。
ただ、音質も悪くないので、
舞台の記録用の映像なのかも知れません。
ソフト化はされていませんし、
きちんとしたテレビ放映もされたことはないようです。
従って、この画像は非常に貴重なのです。

ラクメは主役の少女の名前で、
同役をデセイ様が演じています。

彼女はインドの古代宗教の巫女で、
彼女の父親がまあ宗教の教祖格の人物です。
ただ、神の言葉は巫女のラクメを通してしか、
語られることはないので、
ラクメの存在は信者にとっては、
神の分身のようなものなのです。

舞台はイギリス統治下のインドで、
そのラクメがたまたま出遭った、
イギリス人士官と恋に落ち、
彼女は恋と神、そして父親との板挟みになります。
結局イギリス人士官は、
イギリス人としての生活を捨てられないので、
それを知ったラクメは毒草を呷って、
自ら命を絶ちます。

このアリアは聖地を汚したイギリス人を、
誘い出すためにラクメが歌うもので、
過去の悲劇の伝説を歌う内容です。

デセイ様が絶好調の時期の画像で、
その歌唱は見事の一語に尽きます。

6分30秒の辺りで、
原譜にない超高音が付加されています。

この作品は僕はもう本当に好きで、
デセイ様の主演で生で聴くことが出来れば、
本当にもう死んでも良い、というくらいなのですが、
現実には絶対に聴くことは出来ないので、
別に死ぬ心配をする必要もないのです。

それでは、デセイ様以外の「鐘の歌」も、
ちょっと聴いて頂きます。
オーストラリア出身の、
一時代前の名ソプラノ、
ジョーン・サザーランドのラクメです。
1976年、母国シドニーオペラの舞台ですが、
彼女が50歳の時の歌唱です。
この画像は何度か日本でも放映され、
僕も録画は持っています。
「ラクメ」の全曲の映像は、
多分これしかないと思います。



これもなかなか見事です。
彼女はご覧の通りの堂々たる体型で、
とても少女には見えませんが、
歌自体を聴いている限り、
そんなことは気になりません。
この悠然たる自己主張の強い歌いっぷりが、
さすが一時代前の名プリマドンナ、という感じです。
年齢から、そんなにもう早いテンポでは歌えなくなっているのですが、
それでも高音がこれだけ出ているのは見事です。
最後にトリルという声の音程を上下に揺らして伸ばす部分があり、
それが妙に長いのがこの時代の特徴で、
マリア・カラスもこうした歌い方をします。
最近はこういうのは、あまり流行りませんし、
正直僕はトリルを伸ばして拍手を強要するような歌い方は、
下品な感じがしてあまり好きではありません。

では最後にちょっとびっくりする画像です。
デセイ様とエリザベス・ヴィダルというコロラトゥーラソプラノが、
2人で「鐘の歌」を競演しています。
凄いですよ。



1996年のテレビの映像のようなので、
デセイ様は人気急上昇中の若手で、
エリザベス・ヴィダルは、
同じくフランス出身のデセイ様よりは、
少しベテランのコロラトゥーラソプラノです。
日本では放映されたことのない、
貴重なものです。

このヴィダルは数年前に来日して、
武蔵野市民文化会館で、
1日だけリサイタルを行ないました。
僕は聴きに行きましたが、
いきなりオープニングで「鐘の歌」を歌う、
というプログラムなので驚きました。

ただ、歌自体は何と言うか、
一流の歌ではないのです。
その点はデセイ様とは違いますし、
彼女は同じようなレパートリーは歌いながら、
一流の歌劇場では殆ど歌っていません。
ただ、その高音は驚異的で、
アンコールはハイA(多分) という超高音を出しました。

その2人が一緒に「鐘の歌」を歌い、
その高音を競うのですから、
これはちょっとびっくりの企画で、
特にヴィダルがデセイ様に、
メラメラとライバル心を燃やしているのが、
画面からも分かるのが、
何か微笑ましい感じです。
3分8秒くらいのところの、
高音合戦が聴き物で、
高音フェチにはたまりません。

それでは今日はこのくらいで。

そろそろ出掛けます。

皆さんは良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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コメント 8

Daddy恭男

ラクメの画像、背筋を伸ばして聴いてしまいました。
素晴らしいですね!
by Daddy恭男 (2010-10-03 09:23) 

midori

いやーこれはスゴイですね。
会社でこっそり聴いていましたが、中断して続きは家でゆっくり堪能します。
腰に効きそうです(笑)。
by midori (2010-10-03 17:33) 

fujiki

Daddy恭男さんへ
気に入って頂ければ、
大変嬉しいです。
by fujiki (2010-10-03 21:52) 

fujiki

midori さんへ
midoriさんも今日は仕事なのですね。
お腰が早く良くなると良いですね。
by fujiki (2010-10-03 21:55) 

yuuri37

全部聴かせていただきました。ありがとうございました。
人間って凄いですよね。神様は、時々こうした才能を授けてくださるのですね。
でも、神様はどうやって選抜するんだろう(笑)

by yuuri37 (2010-10-04 00:26) 

fujiki

yuuri37 さんへ
コメントありがとうございます。
デセイ様は咽喉の手術もありましたが、
妊娠出産してからは、
明らかに高音が出なくなりました。
その一方で、全てを歌に捧げて、
声質を維持しているような歌手もいます。
どうも人生の他の多くのものを、
犠牲にしないと駄目なのが藝術のようです。
by fujiki (2010-10-04 06:28) 

hiiragiyama

思わず聞き入りました。
先生が言われる通りデセイ様はスゴイです。
超高音でも澄んでいて、広がり、深みもあるし。
口をじっと見ていました。
口の中が大きく開いていて、頭全体で共鳴していますね。
by hiiragiyama (2010-10-05 01:17) 

fujiki

hiiragiyama さんへ
コメントありがとうございます。
僕も別に声楽に詳しくはないのですが、
大概のソプラノは高音では咽喉を絞る感じになるので、
音が細くなってしょぼいのです。
「出した」という感じで「出た」という感じではありません。
デセイ様は高音部に膨らみと伸びがあるのと、
音がターボが付いたように、
ギュンと跳ね上がるのが魅力です。
よく6オクターブ出る歌手、みたいなのがありますが、
別に力のない声なら、
幾らでも高い声は出る訳で、
マイクを使った歌唱なら、
音量を上げればどうとでもなるのです。
そうしたマイクの歌で満足をされる方は、
それはそれで良いのですが、
実際には人間の歌はマイクで加工されない歴史の方が、
ずっと長いのであり、
生の超高音には、
矢張り別格の魅力があると思います。
by fujiki (2010-10-05 08:38) 

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