SSブログ

早期胃癌画像集 [仕事のこと]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は胃カメラの日なので、
カルテの整理をして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日は診療所で診断した、
早期胃癌の画像の幾つかを見て頂きます。

医学的な早期胃癌というのは、
その癌が比較的浅く、
筋肉の層までは深くない、という意味合いで、
その中には転移しているものも皆無ではありませんし、
その大きさも様々です。
ただ、一般論で言えば、
早期胃癌の95%以上は治療により治癒します。

まずこちらから。
2010Ⅱa染色前.jpg
これはある患者さんの胃カメラの画像です。
胃の粘膜の一部、
青い矢印に囲まれた部分が、
周りより少し色合いが濃く、
若干盛り上がっているのが分かります。
分り易くするために、
色素を掛けてみます。
では次を。
2010Ⅱa染色後.jpg
色素を掛けた画像がこれです。
矢張り盛り上がっている不整な粘膜の広がりがあります。
染色してみると、
意外に広がりが大きいことが分かります。
これは大きさ2センチ弱の早期胃癌です。
ちょっと周囲より盛り上がった、
Ⅱa というタイプのものですね。

この方は数年間胃カメラの検査は拒否されていた方です。
たまたま胃痛の症状があり、
ご本人も検査に同意されました。
症状自体はこの病変とは無関係だと思いますが、
検査は誰でも好きではありませんし、
患者さんの症状をきっかけにして、
必要な検査が行なえる、
というような状況は結構あるものです。

もう少し発見が遅れていたら、
進行癌の範疇に入っていたかも知れません。

では次を。
Ⅱa染色前.jpg
これは健診で発見出来た事例ですが、
青い矢印の先に、
僅かに盛り上がった粘膜の荒れが見付かりました。
では次を。
Ⅱa染色後.jpg
色素を掛けると矢張りこのように盛り上がりがクリアに分かります。
これは1センチ程度の病変です。
矢張り盛り上がりのあるタイプの早期胃癌です。

では次を。
早期3センチ胃癌1.jpg
これは前に一度ご紹介したことがあります。
バリウムの胃の検査では異常なし、
という結果だったのですが、
ペプシノーゲンという、
萎縮性胃炎の程度を見る血液の検査で、
高度の萎縮性胃炎が疑われたため、
胃カメラ検査を行ないました。

青い矢印に囲まれた部分が、
少し窪んでいて、
粘膜も赤く腫れています。
では次を。
早期3センチ胃癌2.jpg
矢張り色素を掛けると病変がクリアになります。
これは窪みのある、
Ⅱc と言われるタイプの早期癌です。
大きさは3センチくらいありますから、
やや大きいものです。
健診の時のバリウムの写真を取り寄せましたが、
病変ははっきりとは指摘出来ませんでした。
健診レベルのバリウム検査では、
早期癌の診断は難しい、という1つの実例です。

最初の2つの事例の方は、
内視鏡での治療で治癒され、
3例目の方は胃の部分切除の手術をされましたが、
治癒切除で経過は順調です。
いずれの方も転移はありませんでした。

胃カメラは食道癌のチェックも同時に行なえますので、
バリウムの検査で異常がなくても、
まずは1回胃カメラの検査をして頂き、
粘膜の所見でリスクがある場合には、
1年に一度の胃カメラ検査を継続することをお勧めします。

今日は診療所で診断した、
「治る」胃癌の画像を見て頂きました。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(42)  コメント(7)  トラックバック(0) 

nice! 42

コメント 7

もも

貴重な映像をありがとうございました。
by もも (2010-07-15 09:00) 

fujiki

ももさんへ
コメントありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。
by fujiki (2010-07-15 20:01) 

恒紀と申します

毎回読ませて戴いています。
私は逆流性食道炎がありプロテカジン10MGを朝夕服用して
ここ数年胸やけの自覚症状は全く消失しています。
年二回の人間ドックで胃内視鏡検査を受けています。
食道裂孔ヘルニアがあり胃と食道のつなぎ目に
軽い炎症はあるものの私の担当医は、ここ5年以上、食道や
胃の生検やヨード散布をしたことがありません。
毎回特に問題なしと言われます。
そこで質問です。
1.内視鏡で見ただけで、生検やヨード散布の必要性は
判断出来るのでしょうか?
2.たまにはこちらから頼んででも生検やヨード散布をして
貰った方が良いでしょうか?
宜しくお願いします。

by 恒紀と申します (2010-07-15 22:24) 

fujiki

恒紀さんへ
コメントありがとうございます。

人間ドックの胃カメラの場合、
ヨード散布や生検は、
やや侵襲的な部分もあるため、
行なわないのが通例だと思います。
病変の疑いがあれば、
再度健康保険の扱いで胃カメラを行ないます。

これは僕の理解で、
必ずしも一般的なものではないかも知れませんが、
病変の発見は、
あくまで肉眼的な観察が第一で、
現時点でも最も感度の良いものではないかと思います。
ただ、施行する医師の経験やある種のセンスに、
左右される部分があるのが問題ではあります。
逆に言えば、
闇雲に組織を取っても、
色素を撒いても、
病変を見逃す場合は同様にあるのだと思います。
より感度の高いとされる診断法も存在しますが、
それに頼り過ぎるのも危険だと、
現時点では思います。

ただ、担当医の先生の、
生検の必要性についての判断は、
あくまで定期的に検査をすることを、
前提にしていると思いますので、
指示通りのタイミングで検査をしていれば、
特別にヨード散布をしたから、
より早期の病変が見付かる、
というものではないと思います。

今度検査の際に、
担当医にちらと聞いて頂くのが良いのではないかと思います。
by fujiki (2010-07-16 06:42) 

恒紀

コメント戴きありがとうございます。
内視鏡医が目で見て追加検査が必要と判断したら
生検やヨード散布をしてくれるとは思っていますが、
最近はやったことがないので、それは状態が良いこと
だとは理解しています。
ただ、念のためと生検などの検査をする慎重な医師と
反対に念のための検査はあえてしない医師もおられると
思っています。
今度、明らかに必要のない状態かをちらっと
聞いて見ます。ありがとうございました。


by 恒紀 (2010-07-16 09:43) 

白ヤギ

貴重な写真を見せていただきありがとうございます。
質問があります。
この大きさ(たとえば1cmくらい)
でどれぐらいのがん細胞があるのでしょうか。
ここまで大きくなるのにどれぐらいの期間なのでしょうか。
このままほおっておくとどうなるのでしょうか。
以上です。
私は、2003年に約5CMのS状結腸癌が見つかり、
開腹手術でがんの部分を含む約15センチ大腸を切除しましたが、
転移がなく、今も元気で再発もありません。
早期であっても転移し助からないがんと、進行がんであっても
転移がなく助かるものもあるのではと思っています。
先生のご意見をお知らせください。



by 白ヤギ (2010-07-16 18:04) 

fujiki

白ヤギさんへ
コメントありがとうございます。

分化型癌でも未分化癌でも、
ある程度の大きさまでは、
いずれもゆっくり進行し、
ある大きさを超えると、
特に未分化癌で急激に増殖が早まる、
というのが一般的な経過のようです。
それはもう数年から10年くらい掛けて、
じわじわと、という感じで、
直径2.5センチくらいが、
その分岐点になり、
それを超えると進行癌に移行することが多い、
という記載がありました。

ですから、1~2センチ以内に育った段階で、
早めに見付けて内視鏡的に切除する、
というのが診断する側の目標になる訳です。

不充分なお答えかと思いますが、
取り敢えずこのくらいでご勘弁下さい。
by fujiki (2010-07-17 06:27) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0