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偽痛風の話 [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は胃カメラの日なので、
カルテの整理をして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日は偽痛風の話です。

偽風痛とは何でしょうか?

偽痛風(pseudgout )とは、
ピロリン酸カルシウムという物質が結晶化したものが、
関節に沈着して起こす、
自己炎症による関節炎のことです。

従って、世界的には、
ピロリン酸カルシウム結晶沈着症
(calcium pyrophosphate deposition )
という言い方が一般的です。
これを略してCPPD です。
偽痛風と言う名称は、痛風に似ているけれどそうではない、
という意味合いですね。

このCPPDは、
60歳代以上で起こることが一般的で、
年齢と共にその発生率は増加します。
4割は90歳以上、というちょっとびっくりでやや疑問の、
日本の統計も報告されています。

どの関節に炎症が起こっても、
おかしくはないのですが、
その半数は膝の関節に起こることが知られています。

つまり、ご高齢の方で、
急に一方の膝が赤く腫れて痛むのが、
この病気の一般的な症状です。

その場合、当然変形性の関節症も考えられます。
しかし、レントゲンを撮って、
そこに典型的な軟骨の石灰化所見があれば、
この病気の可能性が非常に高くなるのです。

ただ、膝の関節以外にも、
肩や肘、手や顎、股の関節にも起こることがあるので、
膝以外の痛みでも、
この病気の可能性はあるので注意が必要です。

この病気はどうして起こるのでしょうか?

この問題は幾つかに分けて考える必要があります。

まず、ピロリン酸とカルシウムが、
過剰に関節に存在するという状態があり、
その物質が結晶化するという病態があり、
その結晶を身体の免疫系が感知して、
自然免疫の過剰反応が起こり、
サイトカインの上昇により炎症が惹起されます。

カルシウムは当然関節液の中に存在します。
ピロリン酸はATPの代謝産物ですから、
これもあっておかしくはありません。

ただ、どうも関節の老化や、
骨粗鬆症によるカルシウムの流出、
ピロリン酸を代謝する酵素の異常などが、
複数関連して、結晶化の要因になっていることは、
間違いがなさそうです。

幾つかの病気が、
このCPPDと関係があることが分かっています。

その代表は原発性副甲状腺機能亢進症、
これは首にカルシウムを上げるホルモンを出す、
しこりが出来る病気です。
結果として骨が溶け、
カルシウムが血液や関節腔で増えるので、
当然石灰化の結晶が起こり易くなります。
これ以外に血液のリンやマグネシウムが低下すると、
CPPDになり易いことが知られています。
その理由はあまり明確なことが、
何処にも書いてありませんが、
おそらくは骨代謝のバランスが崩れることで、
関節液の組成が変化し、
結晶化し易くなるのではないかと思われます。

ちょっと意外なのは、
ヘモクロマトーシスという病気で、
このCPPDの発生が多いことです。

ヘモクロマトーシスというのは、
身体に鉄分が過剰に溜まる病気ですが、
鉄イオンが軟骨を変化させ、
病的な結晶化を促すのだと考えられています。

CPPDには特別の治療はありません。

痛みの発作に対しては、
通常の痛み止めを使い、患部を冷やします。
関節の腫れが強い場合には、
関節の液を抜いたり、
そこに炎症を止める薬を注射したりすることもあります。
症状は通常10日程度で自然にも改善します。

痛風のような予防薬はなく、
一部でコルヒチンという痛風発作の初期に使用する薬や、
シメチジンという胃薬、
痛風の治療に使われるプロベネシド、
マグネシウムの製剤などが使用されていますが、
その使用効果については、
少なくとも世界的に根拠のある治療と、
認められたものはないようです。
(最近のガイドラインにも、
こうした治療については殆ど触れられていません)

今日は偽痛風の総論でした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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コメント 2

yuuri37

今、サッカー見てますか。
私、ずーっと咳が出て居るんです。
今日は、上司に「お前の咳気になる。5月からだよな。胸部XP撮ってこい!」とお達しがありまして、画像をみると、癌や結核等はOK、でも左の肺門辺りががちょっともやっとしていてはっきりしない。右はしっかりみえているけど、よくみると、あれここ白いねえ・・・という感じで
「マイコプラズマですかね?」
「息子は?」
「元気です」
「じゃあ、違うだろう・・・」
「先生、古いですよ(^^)最近は、私ぐらいの年齢もかかるんですから。私、最近勉強してるんですよ」
「マイコプラズマを?」
「ええ、そうです。石原先生に・・・」
「だれそれ?」
「うふふ・・・秘密です」
とまあ、画像をみながら二人で、あーだのコーダの

実は10日前、26才のスッタフが咳でお休みしたので、どうしたのと聞くと、マイコプラズマかもしれないんですって・・・緑色のタンがからむんですよ。って話してましてね。今、42才のスタッフも咳してるんですよ。

「可能性はあるな・・・じゃあ、ジスロマック、レスプレン、ベネトリン、ムコブリンでいきましょう」
ということになったのですが、いかがなものでしょうか?

今晩から、服用をはじめました。


by yuuri37 (2010-06-30 00:33) 

fujiki

yuuri37 さんへ
サッカーは前半だけ見て、
後は録画して寝ました。
最近はある程度睡眠を取らないとまずいので。

マイコはご家族の感染にお気を付け下さい。
大人は熱がなければ、ジスロマック3日で、
大抵はOKだと思います。

これからもよろしくお願いします。
by fujiki (2010-06-30 06:32) 

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