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マイコプラズマ感染症の謎(問題編) [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

朝から健診結果の整理をして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日はマイコプラズマ感染症の話です。

マイコプラズマ肺炎が流行っている、
という報道があります。

実際、診療所でもつい最近、
ご家族が次々と感染したケースを、
複数経験しています。

咳の風邪というと、
百日咳がクローズアップされますが、
マイコプラズマもそれに匹敵する流行を示しています。

それではマイコプラズマとは何でしょうか?

細菌とウイルス、という区分がありますね。

細菌には抗生物質が効くけれど、
ウイルスには効かない、という言い方のされるあれです。

細菌とウイルスというのは、
何が違うのでしょうか?

細菌というのは、核という構造を持つのが、
その一番の特徴です。
核の中には遺伝子があって、
それがシグナルを伝えることによって、
蛋白質を作り、細菌を増殖させます。
つまり、単独で生きることが出来るのです。

それに対して、
ウイルスは2種類ある遺伝子のうち、
RNAかDNAのどちらか一方しか持たず、
従って、感染した細胞の力を借りなければ、
自力で子孫を増やすことは出来ません。
核もありません。

抗生物質というのは、
細菌の細胞の構造には存在して、
人間の細胞には存在しない構造を破壊することで、
その細胞を殺したり増殖出来なくしたりする薬なので、
そもそも人間の細胞の中に入り込んだウイルスを、
退治することは出来ないのです。

よろしいでしょうか?

マイコプラズマというのは細菌の仲間ですが、
最小の細菌で、通常の細菌にある、
細胞壁という構造を持っていません。
従って、特定の形を持たない、
グンニャリした生物です。
しかし、単独で生息出来るので、
矢張り細菌の仲間ではある訳です。

マイコプラズマには多くの種類のあることが知られています。

人間にしか感染しないものもあれば、
動物にしか感染しないタイプのものもあります。

人間に感染するマイコプラズマに限っても、
10種類以上はあることが知られています。

その中で最もポピュラーなのは、
肺炎や咽喉の風邪の原因となる、
肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae )です。

マイコプラズマというと、
肺炎や咳の風邪、と同一のように考え勝ちですが、
実は咽頭炎やへん扁桃炎、
尿道炎などを起こす、
別の種類のマイコプラズマが存在します。

つまり、風邪症状の中には、
別に咳が強く出なくても、
マイコプラズマの感染症が存在するのです。

そして、この感染症には抗生物質が有効です。

訳知り顔に偉そうに、
「風邪には抗生物質は効かないので、使う医者は無知なヤブだ」
と言う方の理屈が、
この一事でも破綻していることが、
お分かり頂けるかと思います。

風邪というのはある一連の症状に対して、
便宜的に名付けられた大雑把な概念で、
その中には当然、
ウイルス感染もあれば、
マイコプラズマを含む、細菌感染も存在します。
耐性菌の問題があり、また抗生物質は人間にも無害な薬ではないので、
不必要かつ安易な投薬は、
厳に慎むべきですが、
「風邪に抗生物質は無効」
というような不正確な言い方は、
仮にも専門家を名乗るような何処かの馬鹿が、
安易に使うべきではありません。
「ウイルス感染には抗生物質は無効だ」
と言うべきなのです。

話が逸れましたので、元に戻します。

さて、マイコプラズマによる肺炎は、
マイコプラズマの感染から、
通常2週間程度の潜伏期を経て、
発熱や頭痛、身体のだるさなどの風邪症状で始まります。
高熱が続き、咳き込みが激しくなるのが、
危険なサインです。
もし治療を行なわないと、
熱と咳の期間は肺炎の場合は11日間に及ぶ、
と言われています。
通常はお命に関わるような重症化はしませんが、
稀に重症の合併症を起こすこともあります。

さて、肺炎マイコプラズマは、
肺以外にも病気を起こすことがあるのが知られています。

中耳炎や関節炎、脳炎や髄膜炎、
心筋炎などの心臓の炎症、
血が止まり難くなったり、
血管の詰まったりする症状との、
関連性も指摘されています。
特に心臓の炎症は、
重症化の大きな要因となります。

マイコプラズマ肺炎には、
幾つか不思議な特徴があります。

まず、この病気は小学校世代に非常に多く、
3歳以下では稀であることが知られています。

マイコプラズマの感染は何故身体の抵抗力が弱い筈の、
乳幼児にはあまり見られないのでしょうか?

これが第一の謎です。

次に、寒冷凝集反応と呼ばれる免疫反応が陽性になったり、
ツベルクリン反応が陰性になったり、
という、身体の免疫の異常が、
非常に高率に出現することが知られています。
何故他の感染症ではあまり見られない免疫の異常が、
このマイコプラズマの感染症では見られるのでしょうか?

これが第二の謎です。

既にご存知の方もいらっしゃると思いますが、
この2つの謎は実は同じ1つの原因によるものです。

ちょっと長くなりましたので、
その答えは明日に続けます。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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コメント 4

yuuri37

今日は、筋肉痛でボロボロv^^;
でも、心は一歩前進できたみたい。職人として頑張るぞ!
彼も正に今、難しいオペに挑んでいます。
準備ができたようです。さて、始めますか・・・
by yuuri37 (2010-06-23 10:18) 

fujiki

yuuuri37 さんへ
前向きになられたようで、
僕も嬉しいです。
職人は本当に憧れです。
by fujiki (2010-06-23 13:09) 

ゆうのすけ

初めまして。ご訪問・nice!ありがとうございます。
また、どうぞよろしく!^^
by ゆうのすけ (2010-06-23 21:15) 

fujiki

ゆうのすけさんへ
こちらこそよろしくお願いします。
by fujiki (2010-06-23 23:01) 

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