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中小企業が滅び、生き残るのはどんな化け物?という話 [仕事のこと]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

朝から紹介状を書いて、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

皆さんはもう食傷気味かも知れませんが、
今日もちょっとジェネリック関連の話をします。

今年4月の診療報酬の改定で、
大きな変更点の1つは、
報道はされませんが、
薬局の調剤に関する点数が、
その薬局のジェネリック薬品の比率によって、
大きく変わる、という改変です。

これはどういうことかと言うと、
これまではジェネリックを含む処方箋の枚数を、
1つの努力目標にしていたのに対して、
今年の4月からは、処方するジェネリック薬品の錠数が、
その薬局の処方した、
全体の薬の錠数の中で、
ある比率を超えると、
加算点数がご褒美として貰える、
という仕組みに変わるのです。

処方された全ての薬の錠数のうち、
3割以上がジェネリックであると、
その薬局は優良薬局として、
17点という加算点数が、
処方箋1枚毎に、ご褒美として追加されます。
17点というのは170円ですから、
優良薬局で処方を受ける皆さんは、
そのご褒美を同時に支払うことになります。
その一方で、ジェネリック比率の低い薬局は、
不良薬局として加算点数が得られません。

ここに先発品が1錠10円、という薬があります。
この薬のジェネリックは7円です。
この薬は1日に3回飲み、通常は5日間程度の処方日数です。

すると、処方箋1枚当たり、薬価の差は5日の処方で、
45円ということになります。
3割負担で皆さんが支払う、自己負担金の差は、
13.5円です。
その一方で、優良薬局でこの処方箋をジェネリックで薬に替えると、
薬局へのご褒美の170円がそれに加算されます。
その自己負担は51円です。

つまりこの薬のみの処方に限って考えると、
先発品を使うよりジェネリックを使った方が、
37.5円も余計に自己負担が増えるのです。
医療費も結果的には112.5円増える結果になります。

医療費を減らすための施策で、
却って医療費が増えているのですから、
こんな訳の分からない話はありません。

でも、これがいつもの行政の遣り口なのです。

お上の指示に従わざるを得ない、
哀れな薬局や製薬会社や医者を、
目の前にぶら下げた人参で釣って、
馬車馬のように自分の意図する方向に走らせるのです。
その人参の代金は、
皆さんの健康保険料や自己負担金なのですから、
これほど楽な話はありません。

こうした施策が実行されると、
どういうことが起こるでしょうか?

まず優良薬局の収入が増え、
不良薬局の経営が傾きます。
実際には不良薬局に行った方が、
患者さんの負担は少ないのですが、
それはあまり一般には情報として伝えられませんし、
多少の患者さんの移動があったとしても、
確実に不良薬局の収支は悪化するのですから、
そうした薬局は結果としては潰れてしまうのです。

どんな薬局も潰れては困りますから、
必死になって、ジェネリック比率を3割以上にしようとします。
これで2年間が過ぎればあら不思議。
お役人が何もしなくても、
自然とジェネリック比率は全国的に3割を超え、
当初の目標が達成される、
という実績が示される仕組みです。

それでは薬局は、自分が優良薬局になるために、
どのような方策を取るでしょうか?

処方薬をリストアップし、
処方量が比較的多くて、
ジェネリック比率の低い薬に目を付けます。
そして、その薬のジェネリックを大量に入荷し、
その一方で先発品は一切仕入れをストップします。

患者さんには半ば強制的に、
ジェネリックへの変更を勧めます。
その勧める行為自体が良き行ないとされ、
先発品を希望されても、
在庫がないのでジェネリックで良いですか、
と言われれば、それでも先発品を、
と言う方は余程少数に違いありません。

ターゲットになり易い薬は、
大体決まっているのです。
その上薬局にも横のつながりがありますから、
ある先発品の薬の処方が、
4月1日になった途端、
一気にゼロになる、と言う事態も、
現実には充分起こり得るのです。

すると、どういうことになるでしょうか?

先日ある国産の先発品メーカーの担当者が、
診療所を訪問されました。

その会社は戦前からの歴史があり、
中小ではありますが、外資に飲み込まれることもなく、
多くの新薬を世に送り出しています。

そして、その主力商品の1つが、
今回の改訂で、4月から売り上げが一気にゼロになる、
と言う危機的な状況にあるのだと、
僕に話してくれました。

つまりジェネリック化のターゲットとして、
多くの薬局で候補に挙がっている、
というのです。

これが現実のものとなれば、
おそらくこの企業の収益は一気に悪化し、
ひょっとしたら、最悪の事態になるかも知れません。

その薬の値段は1錠10円程度です。
ジェネリックにしたって、せいぜい1錠3円の節約になるか、
という程度の話です。

その昔は多くの医者が製薬会社を立ち上げたのですが、
その多くは中小企業で、
現在残っているものは殆どありません。

ジェネリック推進のために、
薬局の経営を操り、
お金で自由を縛り付け、
それで良心的な中小企業を潰すことが、
本当に今後の医療を良くすることに繋がるのでしょうか?

死屍累々の世の中で、
生き残るおぞましい生き物は、
一体どのような姿をしているのでしょうか?

僕は怖ろしくて、それを目にする勇気はありません。

今日はジェネリック推進のもう1つの側面についての話でした。

尚、今回の話は主に、製薬会社の担当者や卸さんの話を元にしているので、
ひょっとしたら、事実誤認があるかも知れません。
何かありましたら、「優しく」ご教授頂ければ幸いです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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コメント 6

さすらいの、、、

昔のことを言うと笑われますが、医師会に武見太郎という傑出したリーダーが居られました。今も存命でしたらジェネリック薬品など蹴散らしてくれたでしょう。街の医院の薬の処方も最近はかくの如し。患者が安価で喜ぶとでも思っているのでしょうか。同じ効果で安い、これは大型詐欺です。黒柳徹子さん、何を血迷っているのでしょう。折角のUNICEF活動もこのCMで私は宗旨変えしました。
by さすらいの、、、 (2010-03-19 11:34) 

iyashi

先生のお話の補足として書かせて頂きます。
4月からの改正によりジェネリックが数量ベースで加点されるのは、3段階に分かれるようです。
20%以上の場合は6点
25%以上の場合は13点
30%以上の場合は17点となるようです。
現時点ではジェネリックが数量ベースで20%を超える薬局は少ないと思われますが、定期的にこのパーセンテージを報告することで30%を超える薬局も増えてくるのは間違いないでしょう。
薬局側も薬価差益がほとんど出ない今の時代、こういう誘導をされればそれを達成しようとするしかありません。
先日薬価を国で決めるのはおかしいと先生が仰っていた通り、薬自体の価格をを自由競争させればこのような誘導をしなくとも医療費は抑制できると私も思います。
by iyashi (2010-03-19 18:47) 

fujiki

さすらいの、、、さんへ
コメントありがとうございます。

メタボ健診とかジェネリック推進とか、
内容がしっかりしていない目標だけが暴走するのは、
割と日本特有の現象なのかも知れません。
by fujiki (2010-03-20 08:05) 

fujiki

iayshi さんへ
補足コメントありがとうございます。

僕は矢張り、お金を餌にして業界をコントロールする、
という行政の手法が、
非常に悪辣で卑しい感じがして嫌です。
その「餌」は結局みんなの税金や保険料なのです。
世の中で得をする方法は、
その情報をキャッチして、
「餌」を常に掠め取りつつ、
行政に寄り添うことなのです。
「税金の無駄遣い」の本質というのは、
実際にはこうしたところにこそあるのではないか、
という気がします。
by fujiki (2010-03-20 08:10) 

みぃ

こんにちは。
ジェネリック薬品は、研究開発費が掛らない分だけ、安く製薬出来て、患者さんの負担が減れば、それはそれで良いのではないかと、単純に考えていましたが、それだけではない裏事情が有ったと言う事なのでしょうね?
いまいち、勉強不足で理解出来ていませんが・・・
私が良く訪問する方のブログで、
良く処方されていた薬がゾビラックと言う薬だそうですが、仕事に持って行くのを忘れて症状が出てしまったそうです。  直ぐ、仕事場傍のクリニックで受診をして、アシロベックを処方されたそうです。
ゾビラックを処方して欲しいと言っても、同じ成分で同じ効能だと言う説明で、安心して服用したとの事。
10時間後、左胸や背中に痛みが生じ、翌日は激痛に変わったとの事。
クリニックに電話をしてから再び受診されたようですが、稀にそう言う薬害が有る事が分かったので、直ぐ止めるように言われたと憤慨していらっしゃいました。
ジェネリック薬品は、元々の薬と成分や効能は全く同じかと思っていたのですが、違うのでしょうか?
10年以上前に、息子もテオドールのジェネリック薬品と思われる物を服用していました。
最近も、ヒアレインのジェネリック目薬を薬局で勧められます。目薬その物には全く違和感も無かったのですが、容器が使いにくく、断っています。

by みぃ (2010-03-20 17:48) 

fujiki

みぃさんへ
コメントありがとうございます。

ジェネリックで成分が同じ、
というのはあくまでその薬効成分だけのことで、
実際には薬には色々な添加物があるのです。
その添加物については、
先発品と同じではなく、
そのために変えたことでアレルギー反応が出たり、
効きが不安定になることも有り得ます。

その辺りの説明がおろそかにされている点も、
ジェネリックの問題点だと思います。
by fujiki (2010-03-21 21:45) 

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