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オバマ大統領の健康診断を考える [仕事のこと]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は終日事務仕事の予定です。

それでは今日の話題です。

アメリカのオバマ大統領の、
健康診断の結果が2月28日に公開されました。

数値も全てではないものの一部が書き込まれた、
3ページの診断書の形式です。

これまでにもこうした公表はされていたのでしょうか?

さすがアメリカ、という感じもしますし、
一方でこんな公開の仕方をしたら、
本当に病気になった時にも、
詳細を公表せざるを得ず、
ちょっと怖い面も覚えなくはありません。

検査の内容を見ると、
日本の「人間ドック」と称するものとは、
結構考え方の違いが見えて、
興味深い点があります。

オバマ大統領は48歳の男性です。

お酒はそこそこ飲み、タバコも吸います。

日本の健診として考えると、
タバコを吸う方では、胸のチェックと咽喉や食道のチェックは、
まず第一に考えます。

要するに胃カメラかバリウムの検査をして、
胸の写真を撮り、肺活量の検査もしようか、
という感じです。

ところが、この健診では、
肺に関しては問診と診察をするだけです。
レントゲンも撮りませんし、肺活量も調べません。
(ルーチンの検査は省略されているので、
ひょっとしたらそこに含まれているのかも知れませんが、
もっと一般的な検査も書き込まれている点から見て、
多分やってはいないと思います。)

つまり、日本で肺癌検診と呼ばれるものに対して、
アメリカではそこに重きを置いていない、
ということが分かります。

また、脳のMRI のような検査も、
40代の後半で大統領のようなお立場であれば、
ちょっとやっておきたいな、と僕などは思うところですが、
それも実施はされていないようです。

消化器の検査はどうでしょうか?

これもちょっと意外ですが、
胃カメラも大腸のカメラもされてはおらず、
その代わりに大腸のCTが撮影されています。
これは通常のCTではなく、CTで大腸のカメラの代用をするような、
ちょっと特殊な方法です。

こうした検査は日本でも行なわれてはいますが、
どちらかと言えば、内視鏡の検査の方が、
ずっとポピュラーに行なわれています。

かなり念入りなのは循環器で、
通常の心電図の他に、EBCTという、
心臓の血管を見る、特殊なCT検査が施行されています。
これは、概ね心臓カテーテル検査に代用し得るものです。

総コレステロールは209mg/dl で、中性脂肪は46mg/dl 。
リポ蛋白分画は、
HDL 62、LDL 138、VLDL 9 です。
これは勿論直接法ではなく、
HPLCにより測定したものです。

空腹時血糖は87mg/dl。
高感度CRP0.015mg/dl。
ホモシステインが11.6 と記載されています。

以上の血液検査が、全て循環器の領域です。

如何にアメリカ人が、心筋梗塞を怖れているかが、
良く分かりますね。

LDL は138で高いと指摘され、指導の対象になっていますが、
個々の数値は日本の基準では正常です。
つまり、この点に関しては、アメリカの基準の方が、
より厳しいのです。
これも心筋梗塞の予防を重視する姿勢の表れですね。

高感度CRP は炎症反応のことですが、
これも心筋梗塞のリスクの推定に用います。
これはまだ日本では、
測ってくれる検査会社があまりないのです。
通常の炎症反応より精度の高い検査でチェックが行なわれます。

ホモシステインもあまり日本では行なわれない検査です。

これはアミノ酸の一種ですが、
心臓の血管の動脈硬化のリスクを推定する検査の1つ、
とされています。

つまり、日本よりずっと執拗に、
こうした点のチェックは行なわれているのです。

総じて、CTが多用されている点にもちょっと驚きます。
心臓もCT、大腸もCTです。
こうした検査を定期的に行なうことは、
放射線被爆と将来の発癌のことを考えると、
あまり大統領の身体にとって、
メリットのあることとは思えません。

ただ、穿って考えれば、
この健診は大統領が大統領の任期を全う出来ればそれでいい訳で、
最も支障のある心臓発作に重点が置かれ、
別に将来の癌の発生は任期後のことなので、
あまり重視はされない、
ということなのかも知れません。

健診1つにも、こうしてみると、
お国柄の違いがあって面白いですね。

翻って日本の政治家はどうでしょうか?

各大臣の健診結果など公表すれば、
恐るべき結果が現われそうです。

しかし、全ての項目ではなくとも、
たとえば認知症のスクリーニング検査や、
人格の激しい偏りがないかを判断する心理テスト、
うつ尺度くらいはチェックしておいても悪くはないですね。

個人情報保護とか差別的だとかと言われるでしょうか?

でも、こと一国の将来に関わることなら、
許しては頂けないでしょうか?
やる意義は充分あると思うのですが…

すいません。
最後はちょっとブラックな感じになりましたので、
もう終わりにします。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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ゆみ

先生、こんばんは。最近は以前程の苦しさまでは行きませんが後鼻漏は続いてます。喉がむずむずしてむずがゆさがあり苦しくなります。時々喉がむせったように苦しいのとがらがら声が治らずにいます。鼻の奥と言うか喉の奥が苦しいです。特に外に出ると後鼻漏のせいか喉がひっつくようにカラカラになります。耳鼻科ではちくのう症ではないんだけどダニアレルギーがあるから後鼻漏はスッキリは治らないよねと言われました。
今のところくしゃみは出てませんが現在の所薬は何も飲まないままで様子見てました。何かアドバイスがあれば教えてもらえると嬉しいです。
by ゆみ (2010-03-03 19:21) 

fujiki

ゆみさんへ
点鼻のステロイドだけ使用してみるのも、
1つの考えかな、とは思います。
粘膜の炎症を取る、という意味合いですね。
漢方薬では小青竜湯と二陳湯を、
それぞれ半量くらいずつで、
使ってみるのも良いかも知れません。

ご参考になれば幸いです。
by fujiki (2010-03-05 08:46) 

ゆみ

先生アドバイスをありがとうございます。点鼻薬はまだあるので使ってみようかと思います。漢方薬も良いようですね。行ってる耳鼻科に聞いてみようと思います。お忙しい中いつもありがとうございます。
by ゆみ (2010-03-05 12:02) 

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