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メタボ健診腹囲変更の異常 [悪口]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は祝日で診療所は休診です。
久しぶりに1日家にいるつもりです。
先週から今週は、
正直ちょっと疲れました。

それでは今日の話題です。

先日、ちょっと尋常とは思えない、
こんなニュースがありました。

【メタボ腹囲「女性80センチ以上」10センチ厳しく…厚労省研究班】メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群、メタボ)の考えに基づき、腹囲測定などを行う特定健診(メタボ健診)の診断基準を検証している厚生労働省研究班(主任研究者=門脇孝・東京大教授)は、腹囲の基準は男性85センチ以上、女性80センチ以上が妥当とする研究成果を明らかにした。現行の診断基準では、男性85センチ以上、女性90センチ以上となっており、女性の基準値がこれより10センチ下回る結果となった。研究班は、メタボ健診の対象となる全国の40~74歳の男女約3万6000人を対象に、メタボの条件となる高血糖、脂質異常、高血圧と腹囲の関係を調べた。その結果、腹囲が男性85センチ前後、女性80センチ前後になると、メタボの条件のうち2項目以上の異常を併せ持つ人の割合が高くなった。現在の基準は2005年、日本肥満学会など8学会が合同で決めた。コンピューター断層撮影法(CT)で腹部の内臓脂肪面積を測り、100平方センチ以上になると、高血糖や脂質異常、高血圧のいずれかを持つ人が増えるとし、それに該当する基準値が男性85センチ以上、女性90センチ以上だとした。

メタボ健診というのは、
小泉改革の恐るべき負の遺産とも言うべきものです。

国民全員に、役に立つかどうかも分からない、
お腹周りの測定と簡単な血液検査、
血圧測定だけの健診を強要し、
それ以外の健診とは別の位置付けにしました。
その健診で「メタボ」と判定されると、
それを改善するための指導、
すなわちお腹周りを減らすための指導が、
これも強制的に施行され、
5年後にその状態が改善しないと、
健康保険組合に、
補助金カットなどのペナルティが課される、
という地獄のような決まりです。

たかだかお腹周りが少し平均より多く、
血圧が僅かに高かったり、
中性脂肪が僅かに高かったりする、というだけで、
別に病気でもないのに、「異常者」のレッテルが貼られ、
ベルトコンベアーで「矯正工場」に運ばれ、
徹底した教育が行なわれます。
そのための費用は、
全て健康保険組合が負担します。

健康とは果たしてこのようにして強制される性質のものでしょうか?

北の国の独裁者だって、
ここまで人間性を無視した法律は作りません。

そんなに健康が大事なら、
まずタバコを廃止しなさい。
お酒も売るのを止めなさい。
清涼飲料水も一切廃止して、
健康食品以外の食品は、
スーパーの棚から撤去すればいいではないですか。
週に1回は運動しなければ、
罰金を取ったらどうでしょう。
睡眠時間を削って働いたり勉強したりしたら、
それでも即罰金です。

健康は別に強制するものではありません。
そんなことは人間社会のイロハのイではないですか。

人類の歴史上、未だかつてこのような法律が存在したことはなく、
こんな馬鹿な健診を、
国民全体に強要しているような国家も存在しません。

メタボ健診で苦境に喘いでいるのは、
まず第一は健康保険組合であり、
第二には医療機関です。
健診の費用は健康保険組合が負担し、
その後の指導の費用も同じように健康保険組合が負担します。
健診の項目は結果としてメタボ以外は貧弱なものになり、
指導の機会も医療機関から奪われます。
得をしたのは、健診に掛かる費用を削減出来た、
自治体であり、企業であり、
健康指導を受注した企業です。
つまりこの仕組みは、
中小の健康保険組合や医療機関を潰し、
統合再編することを目的として、
作られたものだと思われます。

さて、それで今回の改訂ですが、
何とこれまで90センチだった女性のメタボの基準腹囲が、
10センチ減って80センチとされています。
研究班の代表の門脇先生は、
糖尿病研究の日本の第一人者です。
学問的にはそれなりの正しさのある基準変更なのだとは、
僕も思います。

しかし、仮に改定されたとしたら、
一体どれだけの「異常者」が、
女性で増えることになるでしょうか?

尋常な人数ではないことは、
当然想定されます。

たとえ「医学的に正しい」見解でも、
「厚生労働省研究班」というのは、
多分に政治的な結論を出す役目を持っている筈です。
そうであるなら、軽率にこのような結論は、
発表して欲しくはなかった、
というのが僕の率直な感想です。

お腹周りの数字のゲームではなく、
天下の愚行であるメタボ健診は、
即刻廃止するべきです。
健康とは強制される性質のものではない筈です。
しかも、この健診は、
中小の健康保険組合を苛め潰すために、
ただそれだけのために施行されているのです。

健康を強制すれば、
医療費が減って、国家の財政が安定する、
などという臍が茶を沸かすような法螺話は、
「永久機関」や「裸の王様」並みの詐欺師の口説です。
だって一方で、人間を不健康にするものが、
世の中には溢れ、それが利潤を生み、
経済を回転させているからです。
あなたの健康を切り売りすることによって、
あなたは仕事を確保し、生活を確保しているのです。
当然あなたは体調を崩し、
不健康になり、今度は健康を求めて、
健康産業に搾取される仕組みです。
それがまた経済を回転させるのです。
本質的な問題はこの循環であって、
あなたのお腹がちょっぴり大きい、
ということではありません。

門脇先生には是非この制度の廃止をこそ、
提言して頂きたいと切に願います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。


補足です。
今(11日午後9時)たまたま土曜日の新聞を見たら、

メタボ健診は科学的根拠なし…線引き困難

という見出しが一面に躍っていました。
内容を読むと、要するに、
昨年の研究班の報告で、
女性は80センチ以上を超えると、
データの異常が多くなるという結果が示されたが、
今回発症との関係を調べたところ、
腹囲と病気の発症との間には、
あまりはっきりとした関係が見られなかった、
ということのようです。

ひょっとして、昨年の古い記事を見てしまったのかしら、
と思ってググッてみると、
そうではなく、最初に紹介した記事も、
残ってはいます。
それも昨日の2月10日の更新です。
しかし、それが同じ新聞社の記事なのですから、
非常に奇怪です。

どうも門脇先生の説明は、
最初の記事と今の記事との中間のニュアンスなのだ、
とは何となく推測が付きました。

最初にうっかり「腹囲80センチに!」という記事が、
一時的に流れ、
それが慌てて、今度は、
「腹囲当てにならず」に差し変わったようです。

門脇先生、先生を非難するようなことを書いて、
本当に済みませんでした。

先生は正しい意見を述べたのに、
それが無知な誰かさんの頭の中で、
歪められてしまったのですね。

でも、全く同じ情報が、
正反対の結果として同時に報道されるのですから、
何と言うか、本当に世の中は怖ろしいですね。

今回の内容をまとめるとこういうことです。

36000人を調べたところ、
女性の腹囲が80センチを超えると、
メタボの他の基準である、血圧やや高めや、
血糖やや高めの人数が増えることが分かった、
というのが第一段階。
次に同じ人で脳梗塞や心筋梗塞の発症と、
腹囲との関係をみると、
そこには女性の80センチで急に病気が増える、
というような関係はなかった、
というのが第二段階です。

ただ、これは難しいんですよ。
病気の発症とお腹周りとの関係なんて、
どう考えてもクリアな結果が出る訳がありません。
ですから、以上の内容から、
「メタボの腹囲はインチキ」とも言えないし、
「メタボの腹囲をもっと厳しくしろ」
とも言えないのです。

発表された内容は以上で、
このデータを叩き台にして、
今後のメタボの基準を議論すべきだよ、
というのがおそらく門脇先生の発言で、
それから正反対の見出しが、
次々と作成されたという訳です。

それでは皆さんお休みなさい。

石原が今日は追加でお送りしました。
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みぃ

こんばんは。
先日は丁寧に教えて頂きありがとございました。 
メタボ検診は、私も100㎏を超える人ばかりのアメリカでは無いのですから、そんな必要はないのではないかと、思っていました。
スポーツクラブの人々も私の主人も、健保組合の人から、電話攻勢を掛けられ、家を訪ねて指導したいと言われ、断るのに必死のようでした。 
主人はじめメタボ指導をしたいと言われた人々は、多少お腹は出てはいますが、運動も良くやる、健康そのものの人ばかりです。
健保組合の人達も気の毒ですし、どうして急にこんな事になったのかと、不思議でした。
by みぃ (2010-02-11 23:26) 

iyashi

私も新聞読んでやっぱり当てにならない基準だったのだなと思いました。
骨格の大きな人や小さな人で腹囲は大分違うと思っていたので。
by iyashi (2010-02-12 08:35) 

fujiki

みぃさんへ
コメントありがとうございます。
何と言うか、医療費を減らすための目標を作らざるを得ず、
そのための苦し紛れの道具として、
急に出現した企画なのだと思います。
早く廃止するべきだと僕は思います。
by fujiki (2010-02-12 08:44) 

fujiki

iyashiさんへ
コメントありがとうございます。
こうした結果を受けて、
どのような議論が交わされるのか、
興味のあるところです。
しかし、このために多くの混乱があり、
強引に多くの法律が作られてしまっているので、
それを簡単に修正することは、
非常に難しそうではあります。
by fujiki (2010-02-12 08:47) 

さき

お疲れさまです。
全く、その通りだと思います。
健診を受ける、受けないは個人の自由意思だと考えます。
メタボでも良いと言う人もいらっしゃるのではないでしょうか?

高齢で、先が長くないと思うから私は、メタボ健診はせずに美味しいものを食べて、1日、1日を過ごしますと言う人が身内にいます。
ここまでキッパリ意思表示する人に、私は健診を強要しません。アウトローな考えですが。
by さき (2015-03-28 14:33) 

fujiki

さきさんへ
ご指摘の通りと思いますが、
メタボ検診はそのまま続くようです。
by fujiki (2015-03-28 20:39) 

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