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グラクソ社の輸入ワクチンの効果を考える [新型インフルエンザA]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は少し仕事をしてから、
早めに家に帰る予定です。

それでは今日の話題です。

昨日はグラクソ・スミスクライン社から、
輸入予定のワクチンの、
幾つかの問題点についての話でした。

今日はそのワクチンの効果についての話です。

今回公開された資料には、
2つの国内臨床試験の結果が公開されています。

その1つは成人を対象とする国内臨床試験で、
対象は20歳から64歳までの100名です。
抗体の陽転率が、1回接種で94%、2回接種で100%。
生データは公開されていないようですが、
平均値から見ても、2回接種の方が、
明らかに効果が増していることは分かります。
抗体はHI 抗体しか計測されておらず、
あまり気合の入ったものではありませんが、
それでも抗体の上昇に関しては、
国産のワクチンよりその効果は高いことが、
ほぼ確認出来ます。

副反応のデータは、
こうした試験では当てにはなりませんが、
それでも軽いものも含めれば、
9割以上の方が接種後の痛みを訴えており、
まただるさや筋肉痛を感じた人が、
これも軽いものを含めれば、
4割以上の方に認められています。

つまり、どうも一般的な副反応に限っても、
国産ワクチンより明らかに副反応は強いことが、
想定されます。

国内で行なわれたもう1つの試験は、
お子さんに対するもので、
その対象は6ヶ月から17歳の59名です。
その内訳は3歳未満が10名、
3歳から9歳が19名、そして10歳から17歳が30名です。

この結果は1回接種後のデータのみ、
現時点で公開されています。
測定はHI 抗体のみです。
結果を見ると、3歳未満、3歳から9歳で、
いずれも基準を満たす抗体の上昇が、
100%認められています。
つまり全員が基準を満たしたということです。
10歳以上ではその比率は93.3%です。

この結果はかなり画期的なものです。
ノバルティス社のワクチンの同様の試験結果では、
通常量での3歳未満の陽転率は、
5割に過ぎないからです。

用量設定によると、お子さんでの抗原量は1.9μgで
ノバルティス社の試験では抗原量は3.75μgです。
つまり、アジュバントの差が、
この効果の差に繋がっているのでは、
と推測が出来るのです。

この結果を受けて、
グラクソ社のワクチンは、
小児でも用量は成人の半量で、
1回打ちと用量が定められています。

ただ、実際にこのワクチンを今年使用するのは、
お子さんではなく、おそらくは高齢者を含む大人と考えられます。

このワクチンに関しても、
高齢者での効果のデータは乏しく、報告書においても、
「国内においても、高齢者に対する1回接種により免疫原性が期待される」
という文面に留まっています。

つまり高齢者に関しては、
このワクチンを含めて全ての新型ワクチンが、
その効果についてのしっかりとしたデータを、
持ってはいないのが実状なのです。

今回の新型国産ワクチンの接種後の死亡事例が問題なのは、
そもそもワクチンの効果が確立していない年齢層で、
死亡事例が格段に多い、という点にある訳です。

以上、グラクソ・スミスクライン社のワクチンの効果について整理すると、
特にお子さんに関しては、
他のワクチンを凌駕する成績を残しており、
お子さんで1回打ちで一定の効果が期待出来るのは、
このワクチンだけ、と言っても過言ではありません。

ただ、これはあくまで抗体の上昇を見たに過ぎず、
細胞性免疫の賦活作用は、
ノバルティス社のアジュバントの方が強力である、
との意見も存在します。

新型ワクチンの実際の効果は、
もう少し時間が経ってみないと分からない性質のものなのです。

また、副反応もアジュバントを含まないワクチンより、
一般に多い傾向が窺われ、
今後の検討を必要とするところだと思います。

本来この結果だけを見れば、
むしろお子さんにこそグラクソ社のワクチンを接種するべきで、
それをワクチンの効果がはっきりしていない、
高齢者に主体に使用する、
ということになれば、
何か本末転倒のような思いを僕は抱きます。

今日はグラクソ・スミスクライン社の新型ワクチンの効果についての話でした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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