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新型ワクチン接種後死亡事例104例の検証 [新型インフルエンザA]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は胃カメラの日なので、
カルテの整理をして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日も新型インフルエンザ関連の話題です。
まず、年末のこちらのニュースをご覧下さい。

【「新型」ワクチン体調考慮を…季節性より高い副作用報告】新型インフルエンザワクチン接種後の重い有害事象の報告率が、季節性より高く、死亡例でも厚生労働省の依頼した複数の専門家が「因果関係を否定できない」としたケースが5例あることがわかった。同省の検討会は「安全上、大きな問題はない」としているが、接種を考える際、個人の体調などをより慎重に判断するよう求める声が検討会のメンバーからも出ている。厚労省の25日時点の集計では、現場からの有害事象(副作用かも知れない例)の報告は1899件。うち入院相当の重篤例(生存)は191件。その中で129件は因果関係の評価結果が公表され、うち81件は主治医が「関連あり」と報告、専門家も70件を「因果関係を否定できない」とした。死亡例は103件で、うち55件は専門家による評価が公表された。結果を分類すると、関連が低いという判断が36件と多いが、複数の専門家が「因果関係を否定できない」としたのが5件、1人が「否定できない」としたのが6件あり、8件は全員が評価不能とした。過去5年間(2004~08年度)の季節性ワクチンの重篤・死亡例の報告は、因果関係を問わずに集計して平均113件で、接種者100万人あたり3・06件だった。新型の接種をすでに受けた人数は例年の半分程度。厚労省は「積極的な報告によって率が上がっているのではないか」としてきたが、因果関係が否定できないとされたものに絞っても8・15件と高い。季節性の場合、死亡報告は5年間に18件で、専門家が因果関係を否定できないとしたのは1件だけだった。死亡例は、持病のある高齢者が多い。評価を担当している久保惠嗣・信州大副学長は「寝たきりの高齢者は感染機会が少ないので積極的に打たなくていいのでは。接種が持病悪化につながる可能性がゼロではない」とする。森兼啓太・山形大准教授は「ワクチン接種が体の弱い人に“最後の一押し”になる可能性は否定できない。効果と副反応の可能性を考え、打たなくてもいい人を見極めることが重要だ」と話している。(2009年12月31日)

昨年の12月27日までの集計で、
報告された事例だけで、
新型ワクチン接種後の急死の事例は、
104名に上っています。
上の記事で何故103名になっているのかは、
ちょっと分かりませんが、
いずれにしても100名を超えていることは間違いがありません。
このうち、70歳以上の高齢者が、
80名に上っています。
文字通り、接種後の死亡者の80%近くが、
高齢者です。
その一方、新型インフルエンザ感染自体の死亡者は、
12月末の時点で、
70歳以上に限定すれば、
30名に満たない数です。
つまり、実際の感染による死亡者の倍以上、
ワクチン接種後の死亡者が、
70歳以上では出ているのです。

これが本当に想定内の事態なのでしょうか?

僕にはとてもそう言い切る自信はありません。

ここまで事例が集積されて来ると、
ある程度の傾向というものが見えて来るような気がします。

まず、僕の集計上は間違いなく30例以上はあるのが、
接種後数日以内の、
予兆のない急死の事例です。

典型的な事例を1つお示しします。

【事例82】心疾患治療中の80代の女性。新型ワクチン接種の翌日、お元気であったほんの20分後に、物音に気付いた家族が様子を見に行くと、心肺停止で倒れており、そのまま死亡を確認。

この方と、殆ど同じような経過の方の報告が、
30例以上報告されています。
このような偶然が有り得るとは、
僕は思いません。

では、この方達に、一体何が起こったのでしょうか?

1つのヒントは事例の中にあります。

12月の下旬に報告された重症事例の中に、
次のようなものがあります。

心疾患と糖尿病のある70代の女性。ワクチン接種後6時間後より気分不快あり。翌日胸痛出現にて心筋梗塞と診断。

死亡事例の3例目の事例も、
接種後当日の心筋梗塞の確定事例です。

つまり急死の事例は、
その多くは心臓死であった可能性が高く、
ワクチンの刺激によって、
心筋梗塞が誘発された可能性が高い、
と考えられます。
心臓の血管に何の問題もない方が、
そうした経過を取る可能性は殆どないと思われますが、
症状がなくても、実際には血管に、
閉塞を来たすリスクの高い病変が存在した場合、
ワクチン刺激による免疫の過剰な反応によって、
強い炎症機転が惹起され、
動脈硬化巣が破裂して、
血管を詰まらせた可能性が想定されます。

もう1つ事例として多いのは、
呼吸機能の増悪による死亡の事例です。

再び、典型的な事例をお示しします。

【事例59】肺繊維症と肺癌をお持ちの70代の男性。ワクチン接種翌日より、急激に呼吸状態が悪化。肺繊維症の急性増悪との診断にて入院。肺炎と胸水貯留を併発し、4日後に死亡。

こうした事例もざっと見ただけで、
20例を超えます。
いずれも肺のご病気を持ち、
肺の機能の低下した方で、
ワクチン接種後数日以内に、
呼吸状態が悪化し、
肺には肺炎や水が溜まるなどの変化が現われ、
亡くなられています。
一番典型的なのは、
間質性肺炎の悪化です。

これは一種の「サイトカインストーム」のような状況が、
抗原刺激によって生じたものではないか、
と僕は考えます。
インフルエンザによる急性肺炎の重症化の経過と、
極めて良く似ているからです。

死亡事例以外にも、勿論そうした報告は存在します。

たとえば、12月下旬の重症事例の報告にも、
このようなものがあります。

70代女性。ワクチン接種後すぐに悪寒が出現。2日後に間質性肺炎と診断され、入院。

つまり、間質性肺炎は時にワクチン接種により、
重症化するのです。
それは時に細菌感染を伴い、
敗血症になることもあります。
死亡事例の中には、
そうした肺炎の事例も複数含まれています。

現時点での僕のポイントは、
70歳以上で間質性肺炎の方には、
新型ワクチン接種で重症化のリスクがある、
ということが1つ。
それから、心機能が低下している可能性のある方や、
血栓症のリスクが高い、
と考えられる方では、
急性の心臓死のリスクがある、
ということがもう1つです。

今回の死亡事例の多さは、
こと高齢者に関しては、
どう考えても異常なもので、
これまでの季節性インフルエンザのワクチンでは、
殆ど事例のなかったものです。

それが何故なのかは分かりませんが、
今回の国産新型インフルエンザワクチンの抗原刺激には、
何らかの特殊性があって、
それが特にご高齢の方の免疫機能には、
時に大きな副反応をもたらすのだと言うことは、
ほぼ間違いがないのでは、
と僕は思います。

そこで、最初の新聞記事を見て頂きたいのですが、
これまでの報道より少し踏み込んで、
季節性ワクチンより新型ワクチンの方が、
副反応の多いことを、
ほぼ認めた記述になっています。

行政もおそらくは、
今後の状況によっては、
今までとは違う方向に舵を切ろう、
という準備を始めているのかも知れません。

ただそうした遅過ぎる方針転換で、
いつも被害を蒙るのは、
ワクチンを実際に受けた方と、
ワクチンを実際に打った医者なのです。

明日また専門家の会議が予定となっているようですから、
今後の経緯を注意深く見守りたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。
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後悔子

厚生省の発表はとても難しいのですが、先生がわかり易くまとめてくださるので一般人の私にはとてもありがたいです。
被害をこうむるのは医師と患者、本当にそう思います。
そういえば、今回の母の入院のきっかけは心臓でした。家族とテレビを見ていてそろそろ寝ようかと、2階の寝室へ上がって蒲団にはいろうとしたら、急に心臓がバクバクして(私も手で触り驚き)近所の診療所へ行ったのでした。それから見る見るうちに間質性肺炎の悪化です・・・・

by 後悔子 (2010-01-07 12:48) 

田舎医者

いつも興味深く記事を拝見させていただいております。

私も12月初旬に厚生労働省のHPにて発表されている死亡症例の検討会の原文書を読んでおりました。病院で勤めているのですが診療所に勤務に出ることがあり、そこでそのころよく新型インフルエンザのワクチンを打とうと思うのですがどう思いますか?と聞かれることがあったからです。
 その報告書を読んだ翌々日(だと記憶しています)病院の救急対応をしていて、除細動を1時間近くも続け抗不整脈薬をいろいろ投与しても回復しないVF、CPA on arrivalの患者さんがいらっしゃり蘇生処置の甲斐なく一回も心拍再開せず心肺停止に至られました。側壁の心筋梗塞後20年で少なくともここ数年はとても元気に過ごされ昔からあったDMも食事運動で最近はHbA1c5%台とコントロール良好・狭心症状も最近は少なくなっており元気に過ごされていたようです。
前日の夕方にかかりつけ医で新型インフルエンザワクチンを打ち、その後もいつもと変わらず過ごされ、少し寒くなってきた初冬の日、かかりつけ医からいつも言われている、暖かくなってから外出するという話を守り、日もゆるんできた午前に畑にでようとされ、家から出てすぐ車に乗り込まれたところで倒れられたようです。ワクチン接種14時間後の出来事でした。妻は基礎疾患のある人のワクチンの死亡例のニュースを見てやめておいた方がと私が言っていたのに、何で簡単に(注射を)してきたのか。あんな元気だったのに、と泣きはらされておりました。

普段はあまりいわないのですが、何かわかるきっかけでもあればと、剖検を提案し、ご家族もご承諾いただき大学の病理部に剖検をお願いし結果を待っているところです。心臓死は間違いないと思われます。

今回のワクチンについては私も先生のコメントに全く同感です。

死亡例の報告の仕方もやはりここら辺の家族の違和感や思いは切り捨てられ、あくまでもおうえに逆らえない(逆はんかんびいき)といった風の医者の倫理に基づいた報告となっていて独立行政法人 医薬品医療機器総合機構に、看取る経過を最も近くで見たものの責任として家族の思いやそのありのままの経過を書いた反論のFaxを送らせていただきました。
by 田舎医者 (2010-01-07 19:10) 

fujiki

後悔子さんへ
コメントありがとうございます。

実際に想定外のことが起こっていることは、
事実だと思います。
接種後のサイトカインの測定を行なうなど、
その気になれば検証の方法はあると思いますし、
それが新たな知見に繋がる可能性もあると思うのですが、
「見て見ぬ振り」のような態度が強いのは、
非常に残念なことだと思います。
by fujiki (2010-01-08 06:27) 

fujiki

田舎医者さんへ
貴重なお話ありがとうございます。

ただの書類審査のような、
現状の副反応の処理は、
仮にも亡くなられた方がいるのですから、
あるべき姿ではないと思います。

医者はどうしても、
不都合なものはないものと済ませたい、
という心理が働き勝ちだと思います。

先生のような1つ1つの個別の声が、
変わるきっかけになればと思うのですが…
by fujiki (2010-01-08 06:31) 

田舎医者

先生が学生時代からを過ごされたと思われる田舎の医者です。

先生のこのページは30歳女性でSMA syndの疑いの患者さんを担当したときに検索で目にして以来時々読ませて頂いております。

新型ワクチン接種後の影響によると思われる細菌感染症による入院患者さんの担当は昨年11月以来何度かさせて頂いておりますが、厚生労働省には一度も届け出はしておりません。もちろんそれ以外の要素も十分考えられる方々なので因果関係は有るかなと言ったぐらいの印象ですが.

 そういう目で見てないと経過さえも聞かず思いも寄せないことであるとは思っております。三つ子の魂100まででは有りませんが、研修医時代(といってもつい数年前のことですが)のまずは自分のした行為や医療を疑えという教え(自分の元々持っていた主義とも近いのですが)が染みついております。

 その反面、少なくとも1年以上症状が続く間質性肺炎のある、認知症の90歳おばあちゃんなどは、おそらくデイサービスで新型インフルエンザにかかられ、ご家族が結婚式で不在の間に予定していたショートステイ先から受け入れ困難といわれ短期の入院をされたのですが37度台の軽い熱程度で食事接種も良好で2日も症状は続かず、社会的入院のみで退院されました。ひどい狭心症状や心不全のある80代後半の方も孫から感染の新型インフルエンザでしたがけろっとされていました。
 もっともこのお二人とも食事をしっかりとられている元気さを元々持ち合わせていた方でしたが・・・。

整形外科・内科・精神科などいろいろに関わり専門というものを持たない主義で仕事をしているのですが、なぜか今年は年1000件以上の胃カメラをする事になっていて、胃の長さの延長+十二指腸の拡張傾向有る方にSMA syndの症状を聞いてみるとそうですそうです、よくわかりましたねと言われる方が10人に1人ぐらいの割合でいらっしゃいます。嘔吐や病院にしばしばかかると言ったような強い症状の方はそこまでは多くないですが、自然と体が対応しているという印象もそういう方のお話を聞いていると持ちました。

by 田舎医者 (2010-02-03 14:13) 

fujiki

田舎医者さんへ 
色々と貴重な情報ありがとうございます。
専門でなくて年に1000件の胃カメラは凄いですね。
これからも時々覗いて頂ければ幸いです。


by fujiki (2010-02-03 21:53) 

田舎医者

こちらこそいつも貴重なお話たくさんありがとうございます。

CSK 症候群(仮称??)や膠原線維性大腸炎など普段耳にしない情報をありがとうございます。

先生はどちらでこのような情報を得たりや勉強をされたりしているのですか?読むたびに考えております。

P.S.先生の先日のお話の教授室の教授は低い声のH教授ですか?
by 田舎医者 (2010-02-04 18:50) 

fujiki

田舎医者さんへ
そんな大したことはありません。
もっと前に勉強しておけばな、
とその点は後悔しています。
教授については、ご想像にお任せします。
by fujiki (2010-02-04 23:05) 

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