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新型インフルエンザAの現況その15 [新型インフルエンザA]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

朝から健診結果の整理などして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日はまた新型インフルエンザの現況をお伝えします。

診療所でも先週1週間で8名の、
新型インフルエンザ疑いの患者さんを診察しました。
今までの方をトータルすれば、30名は越えます。

これは発熱などの症状があり、
簡易検査でA型インフルエンザの核蛋白質の陽性反応が出た、
という意味合いです。

現時点では検出されたインフルエンザは、
ほぼ100パーセント新型インフルエンザと考えてよいのでしょうから、
この方々は、全て新型インフルエンザと判断して、
問題はないものと考えられます。

東京の近辺では、
通常季節性のインフルエンザが流行するのは、
概ね11月の下旬から12月の上旬にかけてです。
その時期が来れば、もう新型か季節性かの見分けは、
事実上不可能となります。

従って、臨床医の端くれとしては、
今のうちに少しでも多くの患者さんを診察して、
新型インフルエンザというものの感触を、
肌で感じておく必要がある訳です。

診療所で診た今までの患者さんを分析すると、
年齢は5歳から35歳までに分布し、
10代から20代の発生が8割を超えています。
僕は学校医はしていないので、
集団で小学生や中学生を診る機会は少ないのですが、
1つの小学校でその間集団発生があり、
そこに通う数名の患者さんも診ています。
10代のお子さんではほぼ100パーセント急な発熱で、
全員38度は超えます。
発熱後12時間までは簡易検査で陽性にならないケースがあり、
その場合、のどの所見を診ても、
典型的なのどの奥の真っ赤に腫れる感じはありません。
逆に言えば、発熱後4時間程度でも、
のどが真っ赤に腫れていれば、
陽性になるケースがあります。
基本的にお子さんは早く陽性になる場合が多いようです。
これはおそらくはウイルスの増殖が早いことと、
関係がありそうです。
熱の出始めで扁桃腺が腫れていれば、
ほぼインフルエンザではありません。
(ただ、1例例外はありました)
最初に診た中学生のお子さんは、
3日間高熱が続きましたが、
それ以外の方は、1~2日で解熱が見られています。
基本的に全例タミフルかリレンザを処方しているので、
何処までが自然の経過かは分かりませんが、
季節性インフルエンザより、
むしろ熱の持続は短く、
回復も早いという印象です。

これが20代以降の感染ですと、
結構症状にはばらつきがあり、
1日で解熱する方もいれば、
じわじわと微熱が4~5日続くようなケースもありました。
また、熱の出る数日前から、
鼻水が出ていたとか、のどの痛みがあった、
といった症状を話される方も複数いました。
ただ、注意しなければいけないのは、
人間の記憶のあやふやさで、
特定の風邪症状は熱の出る前にはなかったのに、
具合が悪くなってみると、
「そういえば、数日前から体調は変だった」
と言われる方は結構多いのです。

以上の症状は、基本的に季節性インフルエンザと同様です。
季節性インフルエンザも、お子さんでは熱の出方が激しく、
その割には早く回復しますが、
大人では経過はまちまちで、
だらだらと微熱の続くようなケースも結構あります。
それが高齢者になると、
熱の出方も激しい上に、
その経過も長く、重症化するケースが多いのです。
お子さんの重症化は、
主に熱の出始めから1~2日に限られています。

感染力という観点で言うと、
10代の同年齢層での感染は比較的急速ですが、
家族内感染はあまりなく、
従来の報告の通り、
40代以上には感染し難いのでは、
という印象を持ちますが、
報告されている事例では高齢者のケースも結構あり、
どのような高齢者に感染が拡大し易いのか、
高齢者自身の問題なのか、
それともある種のウイルスの変異が存在するのか、
手持ちの情報では判断が出来ません。

潜伏期については、
季節性インフルエンザは2~3日なのに対して、
新型インフルエンザはもう少し長めで、
1週間程度のこともある、
との報告がありましたが、
家族での二次感染が殆どないので、
現時点では、これも判断する情報がありません。
報道されているタレントのケースなどを見ると、
2~3日の印象があります。

僕が一番恐れているのは、
老人ホームでの集団感染で、
報道されている死亡例のように、
急激な経過で呼吸不全が生じるような事態です。
インフルエンザだからといって、
すぐに入院させてくれる訳ではありません。
1~2日はホームで様子を見て、
それで経過が思わしくなければ、
病院に入院を依頼するのが通常です。
しかし、その間に急変すれば、
施設で救命することは非常に困難なのです。

現在、インフルエンザの迅速診断のキットと、
肺炎球菌の多糖体ワクチン(ニューモバックス)は、
品薄の状態になっています。
迅速診断のキットはあまり使うべきではない、
医療費の無駄遣いだなどと、
言われる医者もいますが、
そこまで行政の怠慢に迎合する必要があるのかな、
と僕は思います。
勿論たとえば集団感染で、
全員に検査をするような必要はありませんが、
医者たるもの、症状だけの診断に、
過信するべきではありません。

新型インフルエンザ対策の予算が、
200億円以上計上されたそうですが、
末端の医者や患者さんの1人1人に届くものでなければ、
意味がないと僕は思います。
しかし、そんな気配は微塵もなく、
おそらく僕や皆さんの大部分とは別のところに、
煙のようにそのお金は消えてゆくのだと思います。

医療の緊急対策と称する経費の中には、
明らかにお手盛りと分るようなものが多くあり、
概ね特定の施設や行政の研究機関の懐に消えてゆきます。
それが本当に必要なお金であったのか、
政権も代わることですし、
是非追求して欲しいと僕は思います。
無駄な予算や補助金は、
決して建設関連ばかりではない筈だからです。
私見では、新型インフルエンザ対策と称される税金の中には、
緊急でなどない不必要な支出が、
多く含まれているのだと確信を持っています。

以上、新型インフルエンザの現場からお届けしました。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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yoco

持病が無くても亡くなる人や、熱があまり出ないまま治ってしまったりと症状のばらつきが気になり検索してここへ辿り付きました。
大変参考になりました。
ありがとうございます^^
by yoco (2009-10-15 00:43) 

fujiki

yoco さんへ
コメントありがとうございます。
一般に30代以上は軽症が多いという印象ですが、
今だけのことなのかも知れません。
重症化の予測は、現時点では不可能なのだと思います。
by fujiki (2009-10-15 08:27) 

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