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続・「ゾニサミド」の話 [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は火曜日ですが、
胃カメラはお休みです。
明日から15日までは、
診療所も夏季休暇に入ります。
朝から介護保険の意見書など書いて、
それから今PCに向かっています。

朝は地震でも目が覚めましたが、
最近は肩と腕が痛くて、
夜中に何度かは必ず目が覚めるので、
地震より僕にとっては痛みの方が重大事です。
「大地震になって全部終わりになっちゃえ」
と思わなくもないですが、
軽率にそんなことを考えると、
そんなことにもなりかねない世の中なので、
そんなことは思わないように気を付けます

それでは今日の話題です。

昨日は「ゾニサミド」という薬剤について、
主にその新薬の薬価絡みの話をしました。

今日はゾニサミドという薬についての、
もう少し補足的な話です。

ゾニサミドは唯一の日本で開発された抗痙攣剤です。

その使用は他の抗痙攣剤で治療の困難な、
てんかんの発作に限定されていますが、
実際には他にも多くの興味深い特徴を持っています。

基本的には神経細胞のイオンチャンネルを抑制することにより、
脳の過剰な興奮を抑える方向に働く薬剤ですが、
それと同時に、セロトニンやドーパミンの神経伝達を、
刺激するような作用が確認されています。
抗痙攣剤であるにも関わらず、
SSRIのような作用も持っているのです。
抗痙攣剤の抑制というのは、
通常の安定剤の鎮静とは、
ニュアンスの違う効き方をする訳です。

この点から、双極性障害に、
以前から一部の抗痙攣剤が使用されており、
このゾニサミドもそうした効果のあることが、
期待されています。
確かに一部の患者さんにとっては、
このような薬剤の脳への効果が、
うまく脳のバランスを取るのに、
役に立つのではないか、という想定が成り立ちます。
ただ、問題はそうした患者さんをうまく選択する方法が、
現時点ではあまりないということです。
人体実験的に、試してみるしか方法がない点が、
多くの医者はそのことに罪悪感を持ちませんが、
実際には問題ではないかと思います。

パーキンソン病に対する効果については、
かなり明確に脳の線条体という部分で、
ドーパミンを増やす作用があることが分かっています。

統合失調症の治療薬である、
抗精神病薬は、その副作用として、
パーキンソン病に似た手足の振るえや、
アカシジアのような副作用を示すことがありますが、
それに対して、ゾニサミドが有効だった、
という報告があります。
ただ、これはドーパミンを抑える薬を使いながら、
ドーパミンを増やす薬を使うことになるのですから、
前頭葉のドーパミンは抑えつつ、
線条体のドーパミンは補充するのだ、
という虫のいい理屈はあるにせよ、
慎重に行なうべき治療ではあるという気がします。
副作用を抑えるために更に薬を増やすというのは、
通常あまり褒められた考え方とは言えないからです。
また、患者さんによっては、
ゾニサミドによって、
興奮や妄想傾向が強まった、
という報告もあり、これはドーパミンの上昇から、
当然有り得る事態なので、
この点にも注意が必要です。

以上のような点から、
今後ゾニサミドの適応は、
更に広がってゆくと考えられますが、
問題は副作用です。

抗痙攣剤に比較的特異的な副作用で、
重篤な経過を取るのが、
「薬剤過敏症症候群」と呼ばれる、
重症の薬疹の一種です。
これはまたいつか詳しく取り上げます。

また、発汗障害も比較的多い副作用です。
汗をかかないということは、
体温調節がうまく出来ないということです。
このため特にご高齢の方やお子さんでは、
熱中症を起こし易いことが知られています。

要するに色々な意味でゾニサミドは、
人間の身体を変化させる薬なのです。
効きそうだからと安易に使用するのは、
危険であり、慎重に適応を考えるべきなのだと思います。

今日はゾニサミドの補足的な話でした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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かも公方

>最近は肩と腕が痛くて
私もひどい肩こり、腰痛持ちです。お医者様にこういうのもなんですが、こんにゃくを沸騰したお湯で温めて、タオルでくるんで肩や腰を温めると少し楽になります。
by かも公方 (2009-08-11 09:23) 

fujiki

かも公方さんへ
ご心配頂き申し訳ありません。
矢張り冷えが一番良くないようですね。
さっそく試してみます。
by fujiki (2009-08-11 22:33) 

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