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「愛」という観念の実在について [身辺雑記]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は休みで今起きたところです。
東京は静かな朝、というか、昼ですね。

こういう日は、ちょっと内省的な気分になります。

よく、「愛」みたいな陳腐な言葉は使わずに,
俺は曲を書くんだ、とか、
「愛」をテーマにしない芝居を書くんだ、
とか小説を書くんだ、
とかと言う人がいますよね。
そういう言い方をする人は、
多分気の利いたことを言っているつもりなんでしょうが、
不幸な人だと思います。

「愛」なんて存在しない。
だって、目に見えないじゃないか、
と言う人もいます。

でも、「愛」は実在しますよね。
僕はそれを肌で感じます。
だから、皮膚感覚として真実だと思います。

デヴィッド・リーンの「ドクトルジバゴ」という映画があります。
あれは、見る人で好き嫌いの分かれる映画ですね。
原作を評価する人には評判が悪いんです。
ロシア革命がテーマの1つになっている割には、
描き方は大雑把ですからね。
ただ、あれはね、ラスト近くに何もかも失った主人公二人が、
雪と氷に閉ざされた山荘で、
しばしの間現実を離れて「愛」を育む所がいいんです。
全てを失った時に「愛」が残る、という一つの思想が、
そこに見事に体現されているのです。
でもその「愛」の向こうには、
結局「死」しか残されてはいないんですね。
「死」は観念であると共に、
これ以上はないリアルでもありますからね。
「リービング・ラスベガス」も「愛のコリーダ」も、
そんな映画でしたね。

フロイト流に言えば、
全ての観念は人間の頭の中で生まれた以上、
実在するものでもあるのですね。
何故なら、人間は頭の中にあるものを、
外に作り出さないと、
我慢の出来ない生き物だからです。

全てが滅んでしまった時、
人に残されたものは「愛」しかない。
死ぬ時は、
せめて愛する人と一緒でありたいですね。
ジョン・レノンの言うように、
「愛こそすべて」
陳腐だけど、怖く切ないフレーズでもありますね。
(英語のニュアンスとはちょっと違いますけど)
全てがあるのではなく、それしかないのです。
人間には結局「愛」しかないのですね。
そしてそれは、
「死」という観念と非常に近い場所にあるのです。
常に反対概念を用意して考える、
人間の思考の特徴から言えば、
多分「愛」」という観念は、
「死」との対比で生まれたものだと思います。
対立している筈のその2つが、
意外に寄り添って存在していることに、
人間の不思議が垣間見えるような気がします。

時々そんなことを考えます。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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Epimbi Madrigal

ルカという人について、日本人にとっての愛という概念
その他、いろいろ調べ物していたらたどり着きました。
以前もおじゃましたことありますよね。

愛という観念が不可視の世界にもともとあったものなのか
それとも、誰かが発見し、歴史を通して紡がれ、育てられて
きたものかは判断できませんが、それにしても人間という生き物
はなんだかんだ言ってやっぱり偉大ですね。

そして、どこにでも愛が存在するものでもなく、
人々の努力によって、愛が流通する世界を広げて
きたのだということにも気がつきました。

戦国時代のさなか、ザビエルはどういう風に
愛という観念を伝え、当時の日本人にとってそれは
どんな意味を持ち、どのように受け止められたのか?
殉教という現実を選んでさえもその世界に踏みとどまる
というほどそれはかけがえのないものだったのか?
いろいろ気になりました。

今、私たちの知っている愛とされるものは気の抜けた
コーラのようなものでしかないのではないか?という疑い
も持ちました。普通に愛というものが流通している世界では
ありますが、それはスーパーで並んでいるトマトや、コンビニ
で買うチキンのようにホンモノを知っている人からみたら
まがいものでしかないものなのではないかという疑いをもちました。

それでも、そういうものを賞味できるのも、文明が成り立っている
からであり、それなりに生活の余裕というものが成り立っている
からであり、50年後、100年後、そんな時代がずっと続いている
かどうかわからないと思ったときに、今という時代のありがたさを
噛み締めなくてはならないのではないかと思いました。

これから出来ていくこと、失われていくことの交差点に今という
時はあり、それは記録をつけるに価値のあることではないかと
いつも思っています。

愛という見えない、移ろいやすい観念はこれからどういう歴史を
紡いでいくことでしょう?

by Epimbi Madrigal (2013-08-23 19:51) 

fujiki

Epimbi Madrigal さんへ
コメントありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。
by fujiki (2013-08-24 08:09) 

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