NHKスペシャルの「嘘」 [科学検証]
こんにちは。
六号通り診療所の石原です。
今日は胃カメラの日なので、
カルテの整理をして、
それから今PCに向かっています。
それでは今日の話題です。
以前放映されたNHKスペシャルの、
うつ病についての話の中で、
ある説明の部分が、
どうも引っ掛かっていて、
間違いなく「嘘」だと思うものの、
その確証がなかったのですが、
その後知り合いの精神科医に話を聞いたり、
文献を集めたりして、
ほぼ「嘘」で間違いないと、
確証が持てたので、
今日はその話をします。
問題のアウトラインはこうです。
SSRI という抗うつ剤があって、
これはセロトニンを脳の中で増やすことによって、
うつ症状を改善しようという、
メカニズムの薬です。
番組の説明では、
このSSRI を飲み続けると、
セロトニンが増えることによって、
脳の中のノルアドレナリンというホルモンが低下。
そのことによって、
意欲低下が起こり、
それを医者がうつの悪化と間違えるので、
更にSSRI を増やすような処方が行なわれ、
これが悪循環になって、
薬のせいでうつが悪化するのだ、
と図を使って、
あたかも確定した事実のように、
語られていました。
そんなことが、
本当に有り得るのでしょうか？
もしセロトニンが増えると、
ノルアドレナリンが減るとすれば、
この2つのホルモンは、
脳の中で拮抗していることになります。
ただ、そんな事実は、
人間で証明されたことはかつてありませんし、
動物実験のレベルでも、
まともなデータが得られたことはありません。
確かに髄液の中のノルアドレナリンが、
SSRI 使用時に低下したという報告がありましたが、
このデータは現在ではほぼ否定されており、
それもセロトニンの利用効率が高まったので、
相対的にノルアドレナリンが減った、
というニュアンスに過ぎないものです。
両者が拮抗するなどという、
トンデモ報告ではありません。
要するに、
番組で説明された内容は、
全くの嘘八百なのです。
そもそも初期の抗うつ剤は、
セロトニンとノルアドレナリンの、
両方を刺激する作用を持っています。
また、日本では発売はされていませんが、
NRI と呼ばれる薬も開発されていて、
これは純粋にノルアドレナリンだけを増やす薬です。
また、ミルナシプラン（商品名トレドミン）は、
セロトニンとノルアドレナリンを、
ほぼ同程度増やす作用のある薬です。
仮にセロトニンのみを増やすと、
うつの意欲低下が悪化するのならば、
SSRI よりトレドミンの方が、
遥かに良い薬だ、
ということになります。
しかし、現実にはそうした報告はありませんし、
上記の薬の効果は、
副作用に若干の違いはあるものの、
それ以外は大同小異だ、
というのが現時点での事実です。
セロトニンのみを増やす薬が、
本当にうつ病治療のスタンダードとして望ましいのか、
という点については、
今でも議論のあるところですし、
僕もどちらかと言えば、
スタンダードであるべきではないのではないか、
という見解を持っています。
しかし、それはこのように非科学的な単純化が、
許されるようなレベルの話ではない筈です。
番組の中には、
「抗うつ剤がうつを悪化させている」
と主張される先生が出演されていて、
おそらくはその先生の話を、
裏を取ることなく事実として、
図にしたものと思われますが、
明らかな「嘘」が、
こうして堂々と全国に報道されてしまう、
医療報道の実情には、
改めて恐怖と憤りとを覚えます。
医療報道というのはこのレベルのものなのだ、
ということを皆さんもよくご理解の上、
こうした番組を見て頂ければ、
と切に願います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
六号通り診療所の石原です。
今日は胃カメラの日なので、
カルテの整理をして、
それから今PCに向かっています。
それでは今日の話題です。
以前放映されたNHKスペシャルの、
うつ病についての話の中で、
ある説明の部分が、
どうも引っ掛かっていて、
間違いなく「嘘」だと思うものの、
その確証がなかったのですが、
その後知り合いの精神科医に話を聞いたり、
文献を集めたりして、
ほぼ「嘘」で間違いないと、
確証が持てたので、
今日はその話をします。
問題のアウトラインはこうです。
SSRI という抗うつ剤があって、
これはセロトニンを脳の中で増やすことによって、
うつ症状を改善しようという、
メカニズムの薬です。
番組の説明では、
このSSRI を飲み続けると、
セロトニンが増えることによって、
脳の中のノルアドレナリンというホルモンが低下。
そのことによって、
意欲低下が起こり、
それを医者がうつの悪化と間違えるので、
更にSSRI を増やすような処方が行なわれ、
これが悪循環になって、
薬のせいでうつが悪化するのだ、
と図を使って、
あたかも確定した事実のように、
語られていました。
そんなことが、
本当に有り得るのでしょうか？
もしセロトニンが増えると、
ノルアドレナリンが減るとすれば、
この2つのホルモンは、
脳の中で拮抗していることになります。
ただ、そんな事実は、
人間で証明されたことはかつてありませんし、
動物実験のレベルでも、
まともなデータが得られたことはありません。
確かに髄液の中のノルアドレナリンが、
SSRI 使用時に低下したという報告がありましたが、
このデータは現在ではほぼ否定されており、
それもセロトニンの利用効率が高まったので、
相対的にノルアドレナリンが減った、
というニュアンスに過ぎないものです。
両者が拮抗するなどという、
トンデモ報告ではありません。
要するに、
番組で説明された内容は、
全くの嘘八百なのです。
そもそも初期の抗うつ剤は、
セロトニンとノルアドレナリンの、
両方を刺激する作用を持っています。
また、日本では発売はされていませんが、
NRI と呼ばれる薬も開発されていて、
これは純粋にノルアドレナリンだけを増やす薬です。
また、ミルナシプラン（商品名トレドミン）は、
セロトニンとノルアドレナリンを、
ほぼ同程度増やす作用のある薬です。
仮にセロトニンのみを増やすと、
うつの意欲低下が悪化するのならば、
SSRI よりトレドミンの方が、
遥かに良い薬だ、
ということになります。
しかし、現実にはそうした報告はありませんし、
上記の薬の効果は、
副作用に若干の違いはあるものの、
それ以外は大同小異だ、
というのが現時点での事実です。
セロトニンのみを増やす薬が、
本当にうつ病治療のスタンダードとして望ましいのか、
という点については、
今でも議論のあるところですし、
僕もどちらかと言えば、
スタンダードであるべきではないのではないか、
という見解を持っています。
しかし、それはこのように非科学的な単純化が、
許されるようなレベルの話ではない筈です。
番組の中には、
「抗うつ剤がうつを悪化させている」
と主張される先生が出演されていて、
おそらくはその先生の話を、
裏を取ることなく事実として、
図にしたものと思われますが、
明らかな「嘘」が、
こうして堂々と全国に報道されてしまう、
医療報道の実情には、
改めて恐怖と憤りとを覚えます。
医療報道というのはこのレベルのものなのだ、
ということを皆さんもよくご理解の上、
こうした番組を見て頂ければ、
と切に願います。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
2009-03-31 08:07
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慢性疲労症候群で、ゾロフトとレメロンを飲んでいるのですが、
そのような薬を長年使うと、副作用が怖いと良く効くのですが、
合計3錠飲んでいると、どれくらいの期間でやめたほうが安全なのでしょうか？
by ゾロフト (2016-03-20 13:09)
ゾロフトさんへ
これは明確な基準はなく、
個人差の部分が大きいと思います。
ただ、今のお薬が効果があるようであれば、
症状が安定してしばらくするまでは処方を継続し、
それから時間を掛けて減量し中止することが、
最も良い方法ではないかと思います。
ジェイゾロフトは比較的リバウンドは少ない薬とされていると思います。
by fujiki (2016-03-23 09:36)
先生
お返事大変ありがとうございます。
ゾロフトを二錠位なら、一年位使っても、副作用で、鬱になったり、大変な事になる事はないのですね。
おかげ様で安心しました。
また、CFSで一年位半分寝たきりで、途方に暮れているのですが、
もし何か良い治療法をご存知でしたらお教え頂ければ幸いです。
血液検査で、コルチゾールが7.2位で、DHEA-Sが164と低かったので、DHEA25ミリを服用すれば改善する可能性が高いでしょうか？
ただ、７－KETOという物を一カ月試した分には効果が見られませんでした。
DHEAとは全く別物と考えた方がよろしいでしょうか？
それとも高照度光照射装置を購入、つかって、体内リズムを整えた方が、同じ費用を払うなら良いでしょうか？
by ゾロフト (2016-03-27 10:40)