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風邪に抗生物質は悪か? [科学検証]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日でこのブログも、
丁度1周年を迎えます。
いつも読んで頂き、
本当にありがとうございます。
何も差し上げることは出来ませんが、
本当に感謝しています。

それでは、いつもと変わりなく、
今日の話題です。

疲れた日の夕方、
身体がだるくなり、
背中がぞくぞくして肩が張ります。
「まずいな、今日は早く寝よう」
と誰もが思う症状です。

翌日になると案の定、
のどがひりひりと痛くなり、
熱っぽい感じがします。

皆さんはこの症状を何だと思われますか?

そう、通常「風邪を引いたな」
と判断する訳です。

風邪とは何でしょうか?

改めて聞かれると、
ちょっと迷います。

そもそもは人間に一般的な体調の崩し方の、
典型的な症状に付けられた名前ですね。
鼻水と咳、熱と身体のだるさ、のどや関節、
頭の痛み。
概ねそうした症状が段階的に現われ、
そのピークに達し、それから徐々に回復に向かう時、
「風邪を引いて治った」
という一連の表現が成されます。

その現象の、西洋医学的な説明は何かと言えば、
外部からウイルスや細菌といった、
病原性の微生物が、
鼻もしくはのどから侵入し、
それに対して身体の免疫メカニズムが反応。
通常数日から数週間で、
病原体は免疫の仕組みによって除去され、
症状は改善に向かうという、
一連の経過のことを通常は意味しています。

「風邪に抗生物質を出すのは藪医者だ」
という言い方がされることがあります。

一般の人がそう言われるのはともかくとして、
時に医者の肩書きで、
そうした発言をされる方がいます。

僕はこういうあやふやで誤解を招く言い方をする人が、
嫌いです。

概ねこの文脈の議論はこうです。

風邪はウイルスの病気です。
抗生物質はウイルスには効きません。
効かない薬を出すのは無意味であるばかりか、
抗生物質の効かない耐性菌を作るなどの害があります。
それなのに、風邪に抗生物質を出す医者は、
藪医者なのです。

この論旨には展開としては、
大きな誤りはありません。
ただ、「風邪」という曖昧な言葉を、
さも確定した病名のように扱っている点に、
大きな欺瞞がある訳です。

「風邪」というのは、
漠然とした症状の寄せ集めに過ぎないものです。
その原因は様々で、
ウイルスが原因となっていることもあれば、
細菌の感染が原因となっていることもあります。
時にはアレルギーやストレスが、
免疫反応を介して、
同じような症状を起こすこともあります。

このうち、確かにウイルス感染には抗生物質は効きませんが
(厳密に言うと、ウイルス感染にも、
抗生物質が有効なケースも存在します)、
細菌の感染の多くには、
当然抗生物質が有効です。

そして、問題は風邪の初期症状だけから、
それがウイルス感染であるのか、
細菌感染であるのか、
それとも別の原因によるものであるのかを、
厳密に診断することなど、
出来ないということです。

たとえば、この間記事にした、
「Q熱」という病気があります。
この病気の急性症状は、
所謂「風邪症状」です。
初期に症状だけから、
その診断をすることは出来ません。
初期にこの病気を疑って、
抗生物質を使用すれば、
症状の悪化を食い止められますが、
ただの風邪と判断して、
抗生物質を使用しなければ、
重症の肺炎を起こして、
死亡するケースもあります。

また、「百日咳」という病気があります。
これも初期症状はただの「風邪症状」です。
典型的な咳が出てくるのは、
しばらく経ってからのことで、
長引かせないためには、
まだ「風邪症状」のうちに、
抗生物質を使用した方がいいのです。

つまり、
「風邪に抗生物質を出すのは藪医者だ」
という言い方は、
風邪という一般的な言葉を、
強引に薬物治療に結び付けた、
悪質なプロパガンダの1種です。
症状の経過や流行状況から、
特定の細菌感染を強く疑えば、
早期に治療は開始されるべきで、
いたずらに確定診断を待つべきではありません。

また、以前にも書いたように、
「風邪に安易に抗生物質を出すので、
耐性菌が増えたのだ」
という理屈にも、
僕は疑問を感じます。
抗生物質の使用が、
非常に中途半端に行なわれていることと、
通常その量も極めて少なく設定されていること。
それに加えて、「少量持続療法」という、
わざわざ耐性菌を増やすためのような、
奇怪な治療が行なわれていることが、
日本で耐性菌を増やしている、
本質的な原因だと考えるからです。

僕の現時点での方針はこうです。

初期症状の段階で、
なるべく多くの情報を収集することが、
まずは重要です。
出来る検査は限られていますが、
丹念な診察と流行状況の把握が肝心です。
その上で、細菌感染の可能性をある程度疑ったら、
迷わず抗生物質は使います。
後はその効果の判定に注意をすることです。
効果があれば充分な期間継続し、
診断が誤っている可能性があれば、
治療を修正します。
ただ、急性の感染症に対しては、
診断が全て付くまで治療をしない、
というのは誤った方針だと思うのです。

効く可能性のある薬なら、
早く使うに越したことはないからです。

今日は風邪と抗生物質についての、
僕の考えについての話でした。

それでは今日はこのくらいで。

1周年に見合ったテーマだったどうか分かりませんが、
これからもどうかよろしくお願いします。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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tanico

1周年おめでとうございます!
また、1年、いろんなお勉強をさせて下さり、ありがとうございます!

毎日お忙しいのに、更新は大変かと思いますが、これからも楽しみにしています!

ついでといってはなんですが、私も、毎週のように子供を連れて行っていた小児科医の先生と、町ですれ違ったとき、顔は絶対知っているのだけど、どこで会った方だったかを思い出すのに、2時間近くかかりました。白衣を着てらしたら、もちろん、すぐわかったのですが。
私の場合は、かなり酷いかもしれませんが、母親の記憶力なんて、そういうものかもしれないです。
よろしければ、ご参考に(^^)
by tanico (2009-03-30 11:28) 

fujiki

tanicoさんへ
いつもありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。
by fujiki (2009-03-30 19:36) 

こたつたこ

子供(3歳前)の風邪についていつも悩みます。
傾向として 熱症状はほとんど出ず
鼻水 クシャミからスタートし 咳に移行するかしないかで
いつも鼻水が続きます。
まず かかりつけの小児科に行くと いつもフロモックスが出ます。喉が赤い=抗生物質 という流れです。
同時に耳鼻科で鼻水吸引に行くのですが
こちらはムコダイン等のみで 抗生物質は 鼻水が濁って来るまでは出ません。
いつも鼻水だけが2~3週間続きます。(何故か熱はほとんど出ません)

1歳の時に抗生物質を飲まさず鼻水程度だったので耳鼻科吸引のみ
1週間様子見たのですが治らず 小児科で通常の抗生物質はじめ処方され飲み出したのですが この場合は結果として遅かった?のか痰が肺に溜まり?(背中がゴロゴロしていた)この時ばかりは熱が出たり下がったりが続き 1ヶ月後に高熱となり 咳などはなかったのですが レントゲンと血液検査で「肺炎」となり入院となりました。

これ以来 病院に早めに行き処方される薬はきちんと飲むようにはしているのですが、抗生物質に対しての 悪 的な意見が
最近よく出ているので悩んでいます。

必要な場合もあるし 不要な時もあるだろうしで
今のかかりつけの小児科の先生は 常に抗生物質出すみたいだしで…

とても難しい事なのですが
今後の判断として 何かアドバイス頂けましたら幸いです。
by こたつたこ (2010-11-14 07:16) 

fujiki

こたつたこさんへ
コメントありがとうございます。
鼻水の培養の検査はされたでしょうか?
その結果は1つの参考にはなると思います。
ペニシリン耐性の肺炎球菌が検出されれば、
しっかり除菌する方策を講じるのも、
1つの考え方です。
後、アレルギー性鼻炎や蓄膿が、
ベースにあると、感染症を併発し易いので、
そうした所見がないかどうか、
耳鼻科の先生にも聞いてみて下さい。
もしアレルギーの所見があれば、
鼻炎の点鼻で感染症も起こり易くなることも、
しばしば経験します。

ご参考になれば幸いです。
by fujiki (2010-11-14 19:28) 

こたつたこ

何度もすみません。
子供が風邪を繰り返してる件にて
2週間前に 39℃の熱、病院を変えて 抗生物質3日にムコダイン等はまだ続いていますが、3日程で熱症状治まり、現在まで鼻水のみになっておりました。

そんな中6日前から 親の私が「はやり目」に感染してしまいました。 喉の痛みと時折発熱が少しあります。
眼科で点眼薬のみ処方されています。

そして 本日 子供の体(胴体)に ポツポツと軽く発疹が出ています。カユミ等はなさそうです。発熱もありません。 これは 夏風邪に多いと言われる ウィルス性発疹症の可能性が高いのでしょうか。

「はやり目」もアデノとか言いますし。

私がもらって娘に移したのか 何なのか。

どうしたら良いか困ってます。
「はやり目」の私が 子供連れて小児科に行くのも ダメなのではないでしょうか。

対処法 アドバイス頂けたら幸いです。
宜しくお願いします。
by こたつたこ (2010-12-10 17:51) 

fujiki

こたつたこさんへ
レスが遅れて申し訳ありません。
ちょっと情報が少ないので、
お子さんの湿疹については何とも言えません。
必ずしもお母さんが小児科にお連れ頂いて、
悪いとは思いません。
ただ、必ず事前に医療機関にお電話をして、
どうすればよいかを確認するようにして下さい。
by fujiki (2010-12-11 13:42) 

こたつゆでだこ

先生へ
普段、漢方を扱わない医師やコメディカルなかたは
漢方について誤解があるようです。
私は医師ではないですし、医学についても
知りません。
ただ、症状の確定から
病状の断定までの間、漢方で引っ張るというのは
間違っているのでしょうか。
私は漢方がよく効きます。
昔は効かないと思っておりました。
私の知り合いの医師も看護師さんも理解がなく
あまり効果が、、、とぼやいています。
ここには偽薬の効果はないのでしょうか?
解熱剤は短期的には効果があります。
それに比べて葛根湯や麻黄湯などは
穏やかな効き目であり「効いた!!」という特効薬的な
感覚は薄い=プラセボ効果の減少
全体的な効き目の希薄感、効かないということになるのでは
と考えるのです。
というのも、医師によっては漢方を出し渋る先生もいるからです。


風邪および風邪類似症状=解熱剤、抗生物質、胃粘膜保護剤
がセットになっている処方に私は今でも疑問です。
愚痴みたいですみません。
by こたつゆでだこ (2011-08-23 01:55) 

fujiki

こたつゆでだこさんへ
貴重なご意見ありがとうございました。
by fujiki (2011-08-23 08:44) 

おまえはアホか

たまたまみたけど、Q熱とか百日咳とかわけのわからんばかげた話で、抗菌剤を出すほうがいい、という結論になるのはすさまじい頭の悪さだ。
典型的な阿呆開業医、診療所。悪化したら紹介するだけの無能なカスめ。おまえんとこで責任もってみれ。
by おまえはアホか (2012-04-05 00:59) 

fujiki

おまえは…さんへ
御一読ありがとうございます。
この記事はかなり以前のもので、
今読むと筆致が下品なので、
ご不快に思われたのだと思います。
大変申し訳ありませんでした。

削除すべきなのかも知れませんが、
その当時の私の考えだったことは事実なので、
自分でも上出来のものとは思ってはおりませんが、
そのままに記録として残させて頂いています。
不正確な点の多々あることも、
理解はしています。

ただ、たとえば、
最近ICDより急性副鼻腔炎のガイドラインが出ましたが、
その記載によると、
急性副鼻腔炎の原因は9割以上がウイルス性ですが、
実際には8割以上のプライマリーケアの医者が、
アメリカでも最初から抗生物質を使用しているようです。

従って、
この問題は必ずしも、
日本だけのものではなく、
ウイルス性と細菌性との鑑別が、
非常に困難であることと、
どの医者が何処まで患者さに責任を持つべきか、
という難しい問題に、
起因していると考えます。

痛いご指摘はその通りで、
私も以前は大学病院と市中の総合病院に勤務しており、
ご紹介元の開業医や診療所の医師に対して、
そのような見解を持っておりました。

ただ、1つだけご理解して頂きたいことは、
患者さんを自分の施設で何処まで診るか、
何処までの責任を持つか、
いつ紹介するか、
というのは、
毎日一番心を悩ませる事項で、
ご紹介元の病院へも、
いつも申し訳のない気持ちで、
一杯であるということと、
多くの末端の医者の1人として、
その問題を私なりに、
常に真剣に考えているということです。

ご指摘心に刻み、
「おまえはアホか」さんにも、
いつか得心して頂けるような、
正確な記事を書けるように、
もとより「無能なカス」なのは事実ですから、
無理かも知れませんが、
努力だけは日々続けたいと思っています。

御一読ありがとうございました。
by fujiki (2012-04-05 06:29) 

万能薬剤師

こんにちは。はじめまして。
風邪と抗生物質との話は難しいですね。
私はガイドラインやら、Number need to treatやら、風邪におけるウイルス率の高さやら、もろもろ考えた上でもやはり抗生物質はベネフィットがあると考えている派です。

抗生物質否定派の人はウイルスに効かない、耐性菌が生じる、副作用があるっていう理論でそこで思考停止してしまっているのが良くないと思います。それを知った上でそれでも使う人はそれ以上のことを何度も何度も考えているはずです。

まずnumber need to treatに関してはエンドポイントが何かで数字はいくらでも変わるので全く価値のない指標だと思います。これで議論をするのは論外かと。

耐性菌の問題も疑問です。
ちょっと話がそれますが、ビオフェルミンを飲んでも摂取した菌は定着しない言われています。常時100兆の菌がいるところにたった1億の菌を投入しても効果がないとも言われています。それから考えるに、抗生物質で突然変異した菌はそのまま定着するのでしょうか?とか、風邪のために飲んだ日数で突然変異が起こる確率はどのくらいなのでしょうかとか、疑問がつきません。

副作用の下痢に関しても、同様に抗生物質の服用で常在菌はどの程度死滅するのでしょうか?抗生物質のせいで劇的に数が減って下痢が起きているとはとても考えにくい。

わからないこと、証明されていないことだらけなのに、さも風邪はウイルスが原因だから抗生物質は効かないと結論づけられている状況こそ理解できない。

自分の体で風邪をひいた時に抗生物質を試してみていますが、何回試しても抗生物質を飲むと回復が早い。毎回細菌性の風邪だったということもまずないでしょうから、何かしらプラスに働いていると思うんですけどねぇ。

記事から数年たった今、先生はどのようにお考えでいらっしゃいますか?
by 万能薬剤師 (2014-07-05 01:24) 

fujiki

万能薬剤師さんへ
ご指摘の通りで、
根拠なくフィーリングで抗生物質を出すことも、
勿論大きな問題ですが、
「風邪には抗生物質は効かない」
というような一般の方に誤解を招くような、
とても科学的とは言えないテキトウな言い方を、
平然とする「専門家」が多いことも、
同じくらい大きな問題だと思います。
耐性菌の定着はそれほど多い現象ではなく、
抗生物質と一緒に耐性乳酸菌を服用することも、
あまり意味がないこともご指摘の通りだと思います。
抗生物質を使用したらよくなった、
という印象を持つ方は多く、
その全てがプラセボとは言い切れないように思います。
意外に未知のメカニズムが、
隠されている可能性もあるように思います。
ただ、私も外来で抗生物質を処方する頻度は、
数年前より大分減りました。
by fujiki (2014-07-05 06:22) 

OchemPchem

では「風邪に通常保険適応量の経口第三世代セフェムを処方する医師は悪だ」ではいかがでしょうか?
記事では風邪に抗菌薬を処方する医師を擁護されていますが、私が今まで遭遇した小児科医はCentor scoreさえも確かめずにメイアクトなどを処方していました。
マイコなどの細胞内寄生細菌にセフェム系は効かないし、溶連菌でも第三世代セフェムなんて使わずにアモキシシリンなどで十分なのではないでしょうか?

by OchemPchem (2017-06-27 13:23) 

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