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続続・ステロイドで骨が減るのは何故か? [科学検証]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

朝から健診の整理などをして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

ステロイドで骨が脆くなる原因の話を、
続けます。
今日も全て、
僕自身のデータのみからの説明です。

昨日はステロイド治療をすると、
それがたとえ短期間であっても、
血液のカルシウムイオンは減少し、
それに伴って、
カルシウムを維持するホルモンである、
副甲状腺ホルモン(PTH)が上昇することを、
ご説明しました。

では、その状態が長期間続けば、
どうなるのでしょうか。

まず、こちらをご覧下さい。

これは正常な人の、
カルシウムイオンと副甲状腺ホルモン(PTH)との関係を、
グラフにしたものです。
これも全て僕自身のデータです。
横軸がカルシウムイオンで、
縦軸が副甲状腺ホルモンです。
カルシウムイオンが下がると、
副甲状腺ホルモンは上がり、
カルシウムイオンが上がると、
副甲状腺ホルモンは下がります。
副甲状腺ホルモンは、
骨を壊し、カルシウムを上げるホルモンです。
そのことによって、
一番重要な、
血液のカルシウムイオンを維持している訳です。

よろしいでしょうか。

では次をご覧下さい。

昨日お話したように、
2週間ステロイドを使用すると、
身体にどのようなことが起こるのかを、
カルシウムイオンと副甲状腺ホルモンの関係に絞って、
図にしたものです。
白丸がステロイドを使う前で、
黒丸は使った後です。
斜めの直線は、
1つ前の図での正常のパターンの直線です。

昨日もお話したように、
ステロイドを使うと、
血液のカルシウムが下がって、
そのために副甲状腺ホルモンは上がります。
その変化がほぼ正常のパターンの直線に沿って起こる、
ということは、
副甲状腺ホルモンの分泌自体には、
異常はないということを示している訳です。

よろしいでしょうか。

ところが、今度は長期間ステロイドを使うと、
副甲状腺ホルモンの反応の仕方に、
変化が現れるのです。
そのことを示したのが次のグラフです。
では、次を。

白丸が正常の方で、
黒丸は長期間のステロイド治療を、
受けている患者さんです。
主に膠原病という病気で、
1日10mg以上のステロイドを、
3ヶ月以上使っている方です。
どうでしょうか。黒丸は白丸に比べて、
やや上の方に位置していますね。
要するに、ステロイドを飲んでいない人より、
同じカルシウムの数値でも、
副甲状腺ホルモンの値は高いのです。
つまり、異常に強い反応をしている訳です。
これを、副甲状腺ホルモンのセットポイントの変化、
と言います。

ここから何が言えるかと言うと、
ステロイドを長い期間飲んでいると、
正常より多くの副甲状腺ホルモンが出る状態が生まれます。
副甲状腺ホルモンが多ければ、
それだけ骨からカルシウムが溶け出し、
骨は脆くなるのです。
これを、「二次性副甲状腺機能亢進症」」と言います。
最初はカルシウムの低いことによる反応として出ていた、
副甲状腺ホルモンが、
次第に勝手に出るようになります。
コントロールが効かなくなる訳です。
勿論このことだけが、
ステロイドで骨が脆くなる理由だ、
とは僕も思いません。
ただ、こうしたメカニズムが一部には存在するのではないか、
というのが僕の考えです。

では、この副甲状腺ホルモンの異常な上昇を、
正常に戻すにはどうすればいいのでしょうか。
僕の考える解決策を、
次にお見せします。
では次を。

自分で言うのもあれですが、
これはちょっと画期的なデータです。
例数は少ないのですが、
ステロイドを飲んでいる患者さんに、
ビタミンDを飲んでもらったのです。
活性型のビタミンDを0.5μgという少量で、
期間は1ヶ月間です。
そのことにより、
矢印で示すように、
反応が正常化する方向にシフトしているのです。
ステロイドの骨の変化に、
ビタミンDが有効であることを、
具体的に立証したものです。

それでは、今までの内容をまとめます。
最後の画像をご覧下さい。

ステロイドはこのようにして、
身体のカルシウムの代謝をくるわせ、
その結果として骨が減ります。
それを予防するためには、
副甲状腺ホルモンの異常な反応を、
正常に戻す必要があり、
そのためにビタミンDは合理的な治療に成り得るのです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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acco

最後の1α(OH)D3のデータ、凄いです!! Σ(・o・;)

効果を短期と長期に分けていらっしゃる所も、
非常に分かり易くて、勉強になりました。
1α(OH)D3は直接的にPTHを抑制するんですね!
昨日のバセドウ病のデータでは、
ステロイドの短期効果として、
1,25(OH)2Dが上昇していましたが、
今回は1,25(OH)2Dレベルが
どの程度の方達が対象だったのでしょうか?
25(OH)Dの before and after も
ちょっと気になっちゃったりして ☆

by acco (2009-03-13 23:49) 

fujiki

accoさんへ
ステロイドの長期投与では、
僕のデータ上はビタミンDの数値に、
あまりはっきりした傾向はありませんでした。
短期投与では結構クリアな結果が出るのですが、
長期では患者さんの状態も、
様々で、多くの因子が影響するので、
単純化するのは難しいようです。
勿論ある程度以上のレベルのPTHの上昇があれば、
活性型ビタミンDは上がります。
25(OH)Dは、
この研究の時点では、
あまり重要視していなかったので、
検討していません。
by fujiki (2009-03-14 08:25) 

acco

お返事有難うございます (・∀・)ノ

ステロイドの服用により、
ビタミンDの消耗が激しくなるのかと思って、
質問してみました ☆

1,25(OH)2D3の核受容体の分布や
作用のメカニズムが明らかになったのは、
割と最近の事だと思います。
ステロイド性骨粗鬆症の論文をざっと見る限り、
ビタミンDは、1990年代後半位まで、
カルシウムの吸収を助ける為の『サポート』的
役割の扱いをされている気がします。
失礼な言い方ですが・・・
石原先生が研究されていた時代に、
1α(OH)D3が直接PTHに作用したデータは、
大発見ですよね・・・Σ(・∀・;) ?!

by acco (2009-03-14 12:53) 

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