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血液型と信頼とトルストイの話 [身辺雑記]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は休みで、
今起きたところです。

今日は最近つらつらと思ったことを書きます。
普段とはニュアンスのちょっと違う話かも知れません。

たとえば、血液型なんてナンセンスだ、
と言う人がいますよね。
人間が4つのタイプに分けられるなんて、
おかしいじゃないか、
俺とお前だって違うだろ、
あいつだって、俺の兄貴だって違うじゃないか、
それをA型だから几帳面だなんて、
大雑把過ぎるだろ、
とか何とか。

でも、そんなことを言う人に限って、
結構世界の人間を、
全部自分と同じ人間のように考え、
同じ尺度で評価しているものです。
同僚や友人のした失敗を、
「俺ならこんなことはしない」、
という尺度で非難したり、
「よくこんな状況でそんなことが出来るな」、
と恋人に怒ってみたり。
要するに、世界には自分と同じ考えの人間しかいないように、
考えているのです。

それと比べれば、
血液型は世界の人間を4種類に分類しているのです。
少なくとも4種類の違う人間はいるよ、
というこれはメッセージな訳です。
星占いも動物占いも、
言ってみれば同じ原理です。

何故こんなことを人間は考案するかと言えば
(血液型診断は科学ではなく、
人間の発明だ、というのが僕の意見です)、
そうでもしないと人間というのは、
全ての人間が自分と同じだ、
と考え勝ちなものだからです。
「自我」というのは基本的に傲慢なもので、
自分の考えと世界を一致させようと常に企んでいるのです。
「自我」というのは、
世界征服を企む悪の秘密結社のようなものです。
そして、その欲望が満たされないと、
自分の中に引き籠って、
「俺は駄目な人間だ」、
と暴れてみたり、
「生きていても意味がないから死んでやる」、
と自爆テロみたいな考え方をします。

でも、あなたと同じ人間は、
広大な世界にあなた1人しかいないんですよ。
後は全てあなたとは別の考えを持つ、
あなたとは別の人間なんです。
すべての人間はそれぞれ違っています。
血液型のような性格診断法は、
その単純なことに目を向けさせるための、
人間の智恵なのだと僕は思います。
あなたと同じ考えの人間が1人もいないという事実は、
あなたは孤独だということです。
「自我」の欲望の視点に立てば、
あなた以外の人間は、
全てあなたの敵です。
この絶望から抜け出すためには、
あなたは自分の身勝手な「自我」を捨て、
新しい何かで周りの人間と結び付かねばなりません。
そして、それを見付けた時に、
あなたは本当の意味で「人間」になるのです。
その人為的な何かのことを、
月並みな表現で「愛」と呼びます。

話をちょっと変えます。

マスメディアは連日自分の国の悪口ばかりですよね。
悪口雑言の嵐です。
僕達は最低最悪の国に生きて、
最低最悪の政治家や官僚に支配されているのだそうです。
でも、もしそうだとしたら、
それは誰の責任ですか?
僕達全員ですよね。
それは結局僕達全員が最低最悪だということです。

そんなことはないと僕は思います。

完璧な人間が何処かにいるのでしょうか?
毎日悪口雑言を浴びせられていれば、
誰だって腐ってしまいます。

たとえば、新しい総理大臣が決まったら、
1年くらいは無条件で、
みんなで信頼してもいいんじゃないでしょうか?
その間の責任は全員が負うと考えた方が、
よほどいい政治が生まれそうです。
1年全面的に信じてサポートをして、
それで駄目だったら、その時点で非難すればいいのです。
でも、失望を生むことは絶対にないと思います。
国民全員から信頼された人間が、
期待を裏切る訳がないからです。
思想信条の違いなど、
意外に大した差にはならないものです。
ここで大事なことは、
「信頼」するのであって、「崇拝」するのではない、
ということです。
相手を自分とは違う存在と考えて「崇拝」すれば、
当然独裁者が生まれます。
「信頼」は対等の人間同士の関係なのです。

「信頼」とは自覚の問題でもあります。
「信頼すべき人間がいる」から「信頼する」のではなく、
あなたが信頼するから、
信頼された人間にあなたに対する責任が生じ、
その人間がそれに応えようとして、
「信頼するに足る」人間になるのです。

大学生の時、飲み会の席で、
ある女の子が言いました。
「男はね、女が磨いてくれるのよ」。
これも多分同じ意味です。
(違うかな?)

信頼に足る総理大臣がいないのではありません。
あなたが信頼しないから、
その結果として駄目な総理大臣しかいないのです。
繰り返し言います。
「自我」は自分中心の駄目な奴なんです。
信頼が人間を創造するのです。
信頼せず待っていたら、
全ては悪くなるだけです。

「対立からは何も生まれない」と、
マスメディアは言いますよね。
でもそう言いながらいつも攻撃し、
いつも対立を煽っているのはマスメディアです。
パレスチナとイスラエルに対立するな、と言うなら、
政治家と国民だって、対立しない方がいいでしょう。
その間に距離があるなら、
それを縮めることこそマスメディアの仕事だと思うのですが、
現実はその逆のことを、
「自我」の欲望の赴くままに、
連日演じているのです。

醜態を晒した大臣が、最悪の人格で国家の恥なら、
それは僕達全員の恥ということです。
喜々として首を切って、
入院させればそれであなたの恥は消えるのでしょうか。
マスメディアの皆さんは国際会議という舞台では、
ただの観客なのですか?
客席でブーイングをして、
後で「酷い芝居だった」と記事を書けば、
それでいいのでしょうか?
マスメディアの皆さん、
あなたに罪はないのですか?
優れた芝居は優れた観客が作るものです。
あなたにも責任があるという記事が、
1つでも出れば、
この世の中はもっと優れた芝居になる筈です。
「自我」に迎合することは「世論」ではありません。
そんな唾棄すべきものなら、
全てなくなった方が良いと僕は思います。

すいません。
ちょっと言いたいことをそのまま書きました。
でもこれは概ね昔トルストイの語ったことです。

トルストイは偉大な作家でヒューマニストでしたが、
「ロシア万歳」の民族主義者でもありました。
「戦争と平和」は勿論名作ですが、
まだお読みにならないで、
戦争反対の本だと思われている方がいらっしゃれば、
それは全くの誤解です。
実際に読まれると、
非常に好戦的で民族主義的な内容でもあるのに、
多分驚かれると思います。
あの作品のテーマをひとことで言えば、
「ロシアのみんな元気を出せよ、
昔あのナポレオンをやっつけたじゃないか」
というものです。
ただ、それでいながら人間の真実を見事に照射し、
戦争の悲惨さを糾弾した内容でもあるのです。
人間というものの、
これが複雑さであり、芸術の偉大さです。
単純なメッセージだけで貫かれた本に、
ロクなものはありません。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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コメント 4

acco

☆ 石原先生こんにちは ☆

未来を予測する占いは兎も角、
血液型に関しては、『統計学』だと思ってました。
(4分類して共通項を抽出していると言う意味で)。
石原先生のお考えは斬新だと思います ♪

政治については良く分かりませんが・・・
友人のお母さんが政治家だったので、
学生時代、お手伝いをさせて貰った事があります。
メディアを鵜呑みにして国政を詰る人に限って、
案外選挙に行かない、という印象を受けました。
足の引っ張り合いばかりしてないで、
早く決めるべき事を決めようよ、と素朴に思います。

by acco (2009-02-22 11:51) 

terra

初めまして。 時々覗かせてもらっている者です。
今日の記事はいいですね。 

私は最近、テレビや新聞といった「世間」から遠のいているのですが、
その見たくない理由の一つが、ここに書かれているような不快感です。
なので、普段のモヤモヤがサッと晴れるような御意見を読み、
「実際の世間」にはまだ期待してもいいなぁと安心しました。
良いお話を読ませて頂き、ありがとうございます。
by terra (2009-02-23 01:24) 

fujiki

accoさんへ
あまり厳密に考えて書いた話ではないので、
軽く聞き流して下さい。
ただ、今の酷い状況なら、
マスメディアなんて全て存在しない方が、
たとえ不便ではあっても、
人間は幸せになり世界から争いも減ると、
そのことだけは確信を持っています。
by fujiki (2009-02-23 08:42) 

fujiki

terraさんへ
初めまして。
そう言って頂けると励みになります。
これからもよろしくお願いします。
by fujiki (2009-02-23 08:44) 

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