SSブログ

ネズミにうつるインフルエンザの謎 [科学検証]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は胃カメラの日なので、
カルテの整理をして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日はインフルエンザのワクチンについての、
補足的な話をします。

「新型インフルエンザのワクチンの効果が、
マウスの実験で立証された」
と言う記事と、
「新型インフルエンザのワクチンの効果が、
ブタの実験で立証された」
と言う記事の、
2つがあったとします。
いずれの記事の内容もほぼ同じです。
新しいワクチンを開発し、
そのワクチンを打った動物に、
新型インフルエンザを感染させたところ、
感染が予防された、と言うのです。

皆さんはどちらの記事が、
より人間に対して実現性が高いと思いますか?

答えは勿論ブタです。

通常ワクチンの効果を見るのには、
マウスの実験が多く行なわれています。

しかし、ここで1つの疑問があります。

人間のインフルエンザが、
果たしてマウスに感染するでしょうか?

答えはほぼ「ノー」です。

人間に感染するインフルエンザウイルスが、
人間以外にそのまま感染することが確認されているのは、
ブタとイタチだけなのです。

マウスやラットは扁桃腺のない動物なので、
その免疫の仕組みは、
人間とは明らかに違います。
勿論人間のインフルエンザは滅多に感染しません。
感染してもその症状は人間とは違います。

でも、よく「人間のインフルエンザをマウスに感染させた」、
と言う報道があるでしょう。
先日取り上げた、
例の「万能ワクチン」もマウスのデータでした。
あれは一体どういう意味なのでしょうか?
嘘なのでしょうか?

嘘ではないのですが、
そこにはちょっとした「トリック」があるのです。

マウスの実験の場合、
人間のインフルエンザを、
何度もマウスに感染させて培養し、
次第にマウスに感染し易いウイルスに変えていくのです。
これをマウス馴化ウイルス株、
と言います。
この変化したウイルスをマウスに感染させるのです。
しかし、これは厳密には、
最初のヒトインフルエンザウイルスとは違います。
その証拠に、マウスに馴化したウイルスは、
人間にはあまり感染しないのです。

従って、免疫の仕組みの解明に使うのであれば、
こうした実験は意味を持ちますが、
ワクチンの開発に使うには、
端から限界のある方法です。
この方法で効果の確認されたワクチンが、
人間に効かないことなど、
よくあることなのです。

そのため最近では、
人間の免疫の遺伝子の一部を、
マウスに取り込ませて、
実験をすることも行なわれています。
しかし、免疫の仕組みの全てを、
人間と同じにすることなど出来ません。
あくまでごく一部の反応を同じにして見ているだけのことです。
その結果が、そのまま人間に応用出来る訳ではありません。

研究者はそんなことは百も承知ですし、
皆さんを騙すつもりはありません。
ただ、マスコミの報道は時に悪質な感じがしますね。
科学専門の記者は、
勿論知識はある筈なのに、
マウスの実験で効果が確認されると、
もう人間に実用間近のような記事を書くからです。

「万能ワクチン」の話も、
僕にはそうした話題先行の記事の典型のように、
僕には思えます。

皆さんはどうお考えになりますか?

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0