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ヒスタミンの話 [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

朝から健診の整理をして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日は「ヒスタミン」の話です。

ヒスタミンは蛋白質が分解されて出来る、
ヒスチジンというアミノ酸が、
腸内細菌の働きで更に分解されて出来る、
生体アミンと言われる物質です。
身体の中でも、ヒスチジンから合成されます。

人間の身体の中では、
主に白血球の一種である、
肥満細胞や好塩基性白血球に蓄えられ、
そこから刺激を受けて分泌されます。
身体の中のヒスタミンの殆どは、
この白血球の中にあるのですが、
それ以外に少量が、
胃の粘膜と脳の中に存在しています。
そのいずれもが、人間の身体の中で、
重要な役割を果たしています。

よろしいでしょうか。

分泌されたヒスタミンは、
受容体という鍵穴にくっついて、
その作用を表わします。
その受容体にも幾つかの種類があって、
同じヒスタミンでも、
どのタイプの受容体にくっつくかによって、
その作用は異なります。

現在までのところ、
見付かった順に、H1からH4 まで、
4種類の受容体があることが分かっています。

最初に見付かったH1 受容体は、
血管と平滑筋という筋肉と、
脳の中にあります。
血管のH1 受容体にヒスタミンがくっつくと、
細い血管が広がり、水が血管の外に染み出して、
むくみを作ります。
ヒスタミンを人間の皮膚に注射すると、
皮膚はたちまちむくんで赤く腫れ、
猛烈な痒みを感じます。
これが要するに、「蕁麻疹」と言われる現象です。
何らかの原因で分泌されたヒスタミンが、
皮膚の下の細い血管にある、
ヒスタミンのH1 受容体にくっつくと、
この現象が起こるのです。

アレルギーと呼ばれるこの現象は、
時に人間を苦しめ、死に至らしめる場合すらあります。

何故こんなことの起こる必要性があるのでしょうか?

本質的な意味では、その理由は解明されていません。

ヒスタミンが平滑筋という筋肉にある、
H1 受容体にくっつくと、
平滑筋は収縮します。
要するにぎゅっと縮むのです。
アレルギーの時に呼吸困難になるのは、
気管の平滑筋が、
ヒスタミンがどばっと出ることにより、
ぎゅっと縮むからです。

また、H1 受容体にくっついたヒスタミンは、
唾液や鼻水の分泌を促します。
アレルギーで鼻水が出るのはこのためです。

今までの話で分かるように、
H1 受容体にヒスタミンがくっつくと、
どうもろくなことがありません。
身体は痒くなるし、鼻水はずるずる、
涙はぼろぼろで、呼吸もしづらくなります。

こんなH1 受容体の作用なんて無くしてしまえ、
と考えてもおかしくはありません。
当然そんなことを考える人がいて、
H1 受容体を効かなくする薬が作られました。
ヒスタミンに似た構造をしていて、
ヒスタミンの代わりにH1 受容体にくっつき、
それを効かなくしてしまうのです、
1945年に発売された、
ジフェンヒドラミンがその大元の薬です。
これは今も現役で、
レスタミンという商品名で使われています。

レスタミンを使うと、
アレルギーの症状が、
かなり強く抑えられます。
蕁麻疹は消え、鼻水は止まります。
そこまでは良かったのですが、
この薬を使うと、
頭はぼーっとして、酷い眠気に襲われ、
集中力はなくなり、何もやる気がしなくなります。

何故こんなことが起こるのでしょうか?

それは、ヒスタミンが脳の中のH1 受容体にくっついて、
人間を「目覚めた」状態にするのに、
重要な役割を果たしているからです。
ヒスタミンは人を起こし、興奮させているのです。
この意味でヒスタミンは「覚醒アミン」と呼ばれています。
それをレスタミンが抑えてしまうものだから、
酷い眠気が副作用として表れたのです。

最近H1 受容体を生まれつき持たないネズミが、
実験動物として作られました。
(動物好きの方には申し訳ありません。
残酷な研究ですよね)
H1 受容体がなくても、
別に生きるのには差し障りがありません。
ただ、寝ている時間が多くなり、
起きる時間もまちまちで、
生活のリズムは消失します。
活気はないのに、だらだらと食べ、
中年太りのような太り方をします。

これがどうも、ヒスタミンの脳の中に足りない、
生物のありようです。

何か、他人事でないものを感じますね。

次に見付かったH2 受容体は、
主に胃粘膜に存在して、
胃酸の分泌を刺激します。
従って、これを抑えると、
胃酸が抑えられます。
そのためにH2 受容体を抑える、
H2 ブロッカーが、胃薬として使われている訳です。

ただ、H2 受容体も、少数ながら脳の中に存在します。
この役割はH1 と比べると解明されていない点が多いのですが、
H2 ブロッカー、たとえばガスターやタガメットで、
「せん妄」状態になることがあるのは、
脳の中のH2 受容体が抑えられるのが原因なのでは、
と言われています。

比較的最近見付かったH3 受容体は、
殆どが神経の中で補助的に働いていると言われ、
H4 受容体は白血球にあって、
アレルギーに関わる、
と推測されています。

今日は極めて広い範囲で特異な働きをする、
ヒスタミンの概説でした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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キョウコ

よく「抗ヒスタミン剤」って聞くんですけど、じゃあ、ヒスタミンってなんだろ。。と思って、検索したらこちらのページにたどり着きました。とっても分かりやすくって、面白かった。薬って成分をあまり知らずに飲んでいるんですけど、こういうの見ると、医療関係者じゃなくってもこういうの知るの必要なんじゃないのって思いますしね、まず、成分を調べてから、服用しようと思いました。とてもいい勉強になりました。
by キョウコ (2010-02-04 14:12) 

fujiki

キョウコさんへ
コメントありがとうございます。

そういう風にお読み頂けると、
非常に嬉しいです。
もしよければ、また時々覗いて下さい。
by fujiki (2010-02-04 23:03) 

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