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高齢者の睡眠障害 [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

朝から往診に行って、
今戻って来た所です。

それでは、今日の話題です。

今日は高齢者の睡眠障害についての話です。

年齢と共に不眠が増えることは、
古くから知られている事実です。

以前書いたように、
4つの神経の繋がりが、
複雑に絡み合って睡眠のリズムを作っているので、
生理的な脳の機能の低下によって、
そのバランスはどうしても崩れ易くなる訳です。

1日のリズムを作る上で重要な働きを持つ、
メラトニンという一種の脳内ホルモンは、
年齢と共に減少することが知られています。
また、深い睡眠である「ノンレム睡眠」も、
年齢と共に減少していきます。
年齢と共に眠りは浅くなり、
それだけ目が覚めやすくなるのです。

また高齢者では、
寝る時間も起きる時間も次第に早くなりがちですが、
これは身体のリズムがそのように変化するからだ、
と言われています。
人間の体温は昼に高く、
夜に低くなるのですが、
年齢に伴い、
その上下の幅は縮小します。
これはどういうことかと言うと、
身体にとっての昼と夜との区別が、
小さくなることを示しています。
高齢者が昼に眠くなり、
逆に夜が眠りが醒め易くなるのは、
このためではないか、
と考えられています。

ご高齢の方の「眠れない」という悩みは、
時に結構深刻なもので、
慢性化するとうつ病へ移行する危険性が高い、
とのデータがあります。
従って、比較的副作用の少ない睡眠剤を、
早めに使うのは、
決して間違った考え方ではありません。

僕の経験した実例では、
高血圧で治療を続けていた70代の患者さんが、
主治医に不眠を訴えたところ、
本当にしぶしぶという感じで、
ハルシオンの0.125mg の錠剤を処方され、
それでは眠れなかったために、
増量を希望したところ、
「高齢者には副作用が強いので、
これ以上の薬が出してはいけないのだ」、
と教科書通りの言い方をされて、
門前払いされたというケースがありました。
患者さんの訴えを優先して、
ハルシオンを増量し、
それで不十分な時はサイレースという薬を、
追加で使ったところ、
不眠は改善して、
患者さんはとても喜び、
それから少しすると、
血圧も薬なしで正常に戻り、
睡眠剤も短期間で減量、
中止出来た、という経過を辿ったことがありました。
いつもこんな風にうまくいく訳ではありませんが、
実際こうしたケースもあることは事実なのです。

漢方薬の治療の原則は、
患者さんの訴えの強い、
表面にある症状からまず取って行く、
というものです。
それを取ることによって、
自ずとその裏にある原因にも、
到達し易くなる訳です。

上のケースでは元の主治医は、
本人の訴えは「不眠」だったのに、
測ってみたら血圧が高かったので、
血圧の薬をまず使い、
不眠については、
充分な治療をしなかった訳です。
でも、実は不眠のストレスが、
血圧の上昇の原因になっていたのですね。

高齢者では、睡眠時の呼吸状態の悪い方が、
実は非常に多いと言われています。
それは睡眠の質が上がることによって、
改善する場合があります。
睡眠時の呼吸状態の悪化は、
昼間の高血圧の原因となります。

この理屈でいけば、
不眠を解消することで、
血圧が改善するのは、
決して不思議なことではないのです。

よろしいでしょうか。

ただ、勿論高齢者への睡眠剤の使用は、
副作用が出易いことは事実なので、
慎重ではあるべきです。
呼吸を抑制する場合のあることも事実です。
一般には通常の2分の1の量から、
じっくりと様子を見るべきです。
でも、効かない薬はそれ以上に意味がないですからね。
その辺りのさじ加減が、
非常に難しい点なのだと思います。

他に、高齢者で注意すべきなのは、
「レム睡眠行動障害」ですね。
これは昨日お話しましたように、
特殊な認知症の初期の症状の可能性があるので、
注意が必要なのです。

それから、「むずむず足症候群」による不眠があります。
夜寝ようと布団に入ると、
足に不快なむずむず感があって、
じっとしていられない、
という症状です。
これには、
「周期性四肢運動障害」と言って、
足がびくっと一瞬痙攣して目が覚めるような、
そうした症状を伴うこともあります。
詳細な原因は不明ですが、
脳内のドーパミンの働きと、
関係があると言われ、
また鉄が足りないと起こり易いことも、
分かっています。
治療は鉄が足りなければ、
鉄剤を使い、
そうでなければ、
少量の抗痙攣剤やパーキンソンの薬を、
少量使うのがいいとされています。

今日は高齢者に多い睡眠障害の概説でした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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