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T.S.ストリブリング「ポジオリ教授の冒険」 [ミステリー]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は家族の集まりがあって外出し、
今帰って来たところです。
午前中は老人ホームに呼ばれて一度出動しました。

皆さんは如何お過ごしでしょうか。

ええと、今日はミステリーの話です。

T.S.ストリブリングは、
20世紀前半に主に活躍したアメリカの作家で、
ミステリーだけを書いた訳ではありませんが、
特色のある短編ミステリーを多く残し、
その代表作が3冊の本になって、
翻訳されています。

最初に書いたシリーズが、
「カリブ諸島の手がかり」で、
それに続く時期の作品が、
最近出版された「ポジオリ教授の冒険」です。
今日読了しましたが、
なかなか面白かったですね。

探偵役のポジオリ教授は、
心理学者なんです。
結構有名人で、あちこちで様々な事件に巻き込まれ、
その解決を任されます。
こう書くと、名探偵の活躍するタイプの、
普通のミステリーのようですが、
そうではありません。
結局解決されない事件もありますし、
犯人がまんまと逃げてしまってから、
その真相に気付くようなこともあります。

たとえば収録されている「つきまとう影」という一編では、
ポジオリ教授は、魔術師の助手だった男から、、
殺されるから助けて欲しい、と頼まれます。
彼が魔術師の妻を寝取ったので、
魔術師から追われている、
と言うのです。
魔術師はその助手の上着のポケットの中に、
毎朝「おまえの命はもう3日」、
みたいなメモを入れて行きます。
ところが、閉ざされた部屋の中に、
メモを残すことなど、
不可能な筈なのです。
そうこうしているうちに、
その魔術師自身の姿が、ポジオリ教授の前にも現われ、
不可能な状況での殺人事件が起こります。

皆さんはこの事件が、
どのように解決されると思いますか?

何となく予想のつく方もあると思います。
しかし、そうなりそうで、
そうはならないんですね。
ある意味尻切れトンボとも言える、
ちょっと異様な結末が待っています。
もしご興味のある方は是非お読み下さい。
ただ、僕は結構感心しましたけれど、
腹を立てる人もいるかも知れません。

ストリブリングの小説の面白さはね、
何よりミステリーには少ない大人の小説だ、
ということなんです。
大恐慌直前の混沌とした不条理な状況など、
現在に通じるものがあります。

心理学者が警察に協力して犯罪を捜査するなど、
荒唐無稽だと思われる方がいるかも知れません。

でも、これには実例があるんですね。

20世紀の初め頃、
ユング博士は連想実験という方法で、
犯罪捜査に協力し、一定の成果を上げました。
これはある言葉に対して、
初めて頭に浮かんだ言葉と、
その言葉を思い付くために要した時間を記録し、
それからその人物のコンプレックスを探る方法です。

ストリブリングは勿論このことを知っていたので、
彼の後半生の作品には、
明らかにユング心理学の影響が見て取れます。
この辺りも、僕には面白かったですね。

それでは今日はこのくらいで。

明日はまた医療の話題をお届けします。

石原がお送りしました。



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