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「ニコチン」の話 [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

朝から健診の結果の整理などして、
それから今PCに向かっています。

それでは、今日の話題です。

今日は禁煙外来に結び付く話題として、
タバコの主成分の1つである、
「ニコチン」の話をします。
ご存知の方も多いとは思いますが、
これが結構面白いのです。

「ニコチン」は、神経を刺激する物質です。
それ以外に、直接血管に作用して、
血管を縮めたりする作用もあります。
でも、今回メインでお話するのは、
神経を刺激する作用ですね。

以前も何度か触れた、
「アセチルコリン」という神経伝達物質があります。
身体では自律神経に作用して、
様々な働きをします。
大雑把に言えば、
分泌を増やし、
気管を縮め、胃や腸やその他の筋肉を動かします。
この作用が過剰になるのが、
サリンや農薬の中毒で、
足りなくなる病気が「重症筋無力症」です。

このアセチルコリンは、神経の受容体という鍵穴に、
くっついてその作用を表わす訳ですが、
そのアセチルコリンの受容体には、
大雑把に言って2つのタイプがあります。
その1つがムスカリンという物質で刺激される、
「ムスカリン受容体」で、
もう1つがニコチンで刺激される、
「ニコチン受容体」です。

「ニコチン受容体」は、
基本的にはアセチルコリンがくっつく訳ですけれど、
その同じ受容体に、ニコチンもくっつくんです。
ニコチンがくっつくと、
アセチルコリンがくっついたのと同じように、
神経は刺激され、その役割を果たします。

タバコを吸うと、少し胃腸の動きは良くなります。
これはね、ニコチンに胃腸の自律神経の受容体が刺激されて、
神経の作用が起こるからです。
でも、胃腸には主に「ニコチン受容体」より、
「ムスカリン受容体」の方が多いので、
それほど強い作用にはならないのです。

ニコチンがメインに働くのは、
脳の中です。
脳の中にも「ムスカリン受容体」はあるんですが、
どちらかと言えば、
「ニコチン受容体」の方が強い働きをしているのです。

ここまで、よろしいでしょうか。

「ニコチン受容体」には、
例によって幾つかの種類があります。

この受容体は2つの部分から出来ていて、
それをα(アルファ)とβ(ベータ)と名前を付けています。
このαとβにも、
それぞれ、幾つかの種類があります。
脳の中には、
主にα4β2という組み合わせと、α7というタイプが多く、
研究のやり易さから、
α4β2のタイプの働きがメインで調べられたのです。

禁煙の飲み薬として開発された「チャンピックス」は、
このα4β2にくっつく薬です。
ここにくっつくということは、
ニコチンがくっつけなくなるということです。
その意味でこの薬はニコチンの作用をブロックする薬です。
ただ、くっついた「チャンピックス」は、
ニコチンより少量のドーパミンを先の神経に分泌する作用があり、
そのためこの受容体の、「部分作動薬」と言われているのです。

分泌されたドーパミンが喫煙に似た快感を、
脳内に誘導し、
あまりタバコを吸いたくない気分にさせる、
という理屈です。

副作用としてやや多く報告されているのは、
便秘で、
これはお腹へのアセチルコリンの作用を、
薬剤が少し妨害するためと思われます。

それから、異常な夢や不眠の生じることが報告されていて、
これは脳内のドーパミン分泌が刺激されることが、
その原因と考えられます。

通常3ヶ月のみの使用なので、
大きな問題になることは少ないと思いますが、
心療内科も診れる施設での使用が望ましいのではないか、
というのが、
やや手前味噌になりますが、
僕の現時点での考えです。

以前「チャンピックス」の話は1度取り上げたのですが、
名前も「キャンピックス」と間違えて書いてしまいましたし、
内容もどちらかと言えば否定的なものでした。
まあ、効果については画期的とまでは言えないレベルなのですが、
今までの同様の目的の薬とは、
違ったメカニズムの薬ですし、
日本の発売から半年の時点となり、
副作用の報告も少ないことから、
少し以前より肯定的に捉えているのが現状です。
慎重に使用してみて、
また僕なりに分かったことがあったら、
ブログでご報告したいと思います。

ちょっと長くなりましたので、
今日はこのくらいで。
明日ももう少しニコチンの話を続けます。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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