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文科系の医者と体育会系の医者 [仕事のこと]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は胃カメラの日なので、
カルテの整理をして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

良い医者には2種類のタイプがあると思うんです。

「神の手」じゃないですけど、
手術を始めとする手先の技量に長けている医者と、
科学者として論理的な思考の出来るタイプと。
文科系の医者と体育会系の医者、と言ってもいいかも知れません。

この2つを兼ね備えている医者が、
勿論理想なんでしょうけれど、
それはなかなか難しいことで、
外科医はその技術に自信を持つほど、
論理的な思考はおろそかになりがちですし、
逆に論理で考えるタイプは、
何故か手先の技術は不得手なことが多いようです。

手先の技術については分かりますよね。

では、論理で考える、とはどういうことでしょうか。

僕が今印象に残っているのは、
大学の医局にいた時に、
その時医局長だったM先生の診療でした。

医局長のM先生は、
もう入院患者の主治医をすることは、
殆どなかったのですが、
丁度医局員の家族が、
重症の感染症になって入院したので、
その時だけは自分で主治医を務めました。

患者さんは一時は集中治療室に入るほどの状態でしたが、
M先生の治療によって、回復し、
二ヶ月後には元気に退院されました。

M先生の治療は、まず医学の教科書を、
熟読するところから始まります。
それから、関連する文献を取り寄せ、
最新の治療法と、その利点とリスクとを、
注意深く検討します。

それから、患者さんを詳細に診察し、
どの治療法が、どの薬が、
その患者さんに適合するかを、
慎重に見定めて行く訳です。

たとえば、抗生物質の使用については、
色々な考え方があります。
医者は薬を自分の経験から使うことが多いのです。
いい薬であっても、1度副作用を体験すると、
どうしてもその薬を使うのには抵抗を感じるようになります。
また、1度よく効く経験をすると、
何となくその薬を多用したくなります。
要するに、論理ではなく、
癖や感情が先行するのですね。

M先生の治療には、
そうした個人の癖やバイアスが掛からないのです。

それが、僕の考える論理的な治療、
ということですね。

手術の技量が優れているとするでしょう。
当然それに対して自信とプライドとを持つようになります。
そうすると、自然とある種の癖で、
患者さんの治療に当たるようになるのですね。
「俺のやり方が正しいんだ」、
という考えが先行する訳です。

ねっ。
そう考えると、医者の2つのタイプが、
なかなか両立しない訳が、
お分かり頂けるのじゃないか、と思うのです。

2つのタイプの医者が、
協力して1人の患者さんに対応するのが、
多分理想的な姿ですね。
でも、現実にはそうしたことは少ないような気がします。

技術先行の医者を、
マスコミは持ち上げる傾向が強いですからね。
それで生じている問題も、
結構多いのではないかと思うのです。

今日はそんな医者の2つのタイプの話でした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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