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セラチア菌の赤い警告 [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

すっきりしない天気が続きますね。
朝から溜まった健診結果の整理をして、
それから今PCに向かっています。

さて、今日の話題です。
今日は、セラチア菌の話を幾つか補足します。

セラチア菌は、基本的には毒性の少ない菌です。
ですから、人間の腸の中にも生存し、
人間と共存している訳です。

増殖すると赤い色素を出して赤く見えるので、
細菌学の実験などで好んで使われますし、
「海の水が血に変わった」というような、
キリスト教の奇跡と言われているものの幾つかが、
このセラチア菌のためではないか、
という絵解きをする人もいます。
サンゴに感染して、サンゴ礁に被害を与えている事例もあるようです。

風邪のように飛沫感染して、
肺炎を起こすことがあります。
ただ、これは免疫力が低下した方に起こることが殆どです。
健康な人(ちょっと嫌な言い方ですが、他の表現が難しいので)
には感染しないのですね。
増殖すると、痰が赤くなるので、
喀血を間違うことがあるそうです。
(僕自身は見たことがありません)

今回敗血症が起こったのは、
血液に直接菌が注入されたからです。
セラチア菌はエンドトキシンという毒素を出すので、
或る程度以上の量が血液中に入れば、
その毒素の影響で、
重篤な症状になることがあるのですね。
こうしたことは、
勿論自然には起こりません。
あくまで、人為的に菌が注入されたからです。
これが、今回の三重の事件が医療事故であり、
人災である由縁ですね。

三重の事件で感染の原因となった点滴に、
注入されていたメチコバールというビタミン剤は、
鮮やかな赤色をしているんです。
光によって分解されるので、
直前まで光の当たらないようにして保管されています。
作り置きなどして置いておけば、
すぐにその効力はなくなってしまいます。
つまり、作り置きに最も適さない薬なんですね。
無知ということの恐ろしさを、
ここにも感じます。

もし点滴にメチコバールが入っていなければ、
点滴液は無色透明です。
仮定の話ですが、
無色透明の容器の中でセラチア菌が増えれば、
点滴液は、ほんのりと赤く変色した可能性があります。
危険だ、というサインのように。
しかし、メチコバールが入っていたので、
元々点滴液は赤くなり、
そのサインは判別不可能となった訳です。
ここにも、何か不思議な暗号のようなものを感じますね。

今回感染を起こしたセラチア菌は、
今までの事例の殆どで検出された、
serratia marcescens とは違うタイプの、
serratia liquefaciens という菌種です。

感染症研究所のホームページに、
「セラチアとは、serratia marcescens のことである」
と、かなり誤解を招きかねない表現が使われているので、
間違って報道している報道機関もあるようです。

正確には、セラチア属には、9種の菌があり、
そのうちの1つがserratia marcescens なんですね。
ただ、セラチア属の90%以上はこの菌なので、
一般にセラチア菌と言う時には、
この菌単独を指していることもあるのです。

よろしいでしょうか。

今回検出されたserratia liquefaciens については、
2001年に透析で使う造血剤のアンプルから感染した例が、
海外で報告されて、論文になっています。
1本のアンプルを、2回に分けて使っていたため、
点滴作り置きと同じ原理で、
セラチア菌が増殖したのです。
透析というのは、直接血管に薬を入れるので、
同様に敗血症の原因となった訳です。

今後このタイプのセラチア菌が、日本でも猛威を振るうようなことが、
起きなければいいのですが。

それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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