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セラチア菌の感染経路を検証する [科学検証]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

東京は、今日は朝から雨です。
朝から何となくだるくて、
気分がすぐれません。
一週間の疲れが出ている感じです。
健診の結果を整理して、
それから今PCに向かっています。

さて、今日の話題です。
昨日の予告通り、
三重県の整形外科クリニックでの、
セラチア菌院内感染の話です。
点滴によって、セラチア菌の敗血症を起こし、
死亡者も出た事例です。

6月19日に、伊賀市役所で感染経路についての発表がありました。
一部まだ不明の点がありますが、
これでほぼ事件の全容が明らかになりました。

酒精綿の入った消毒缶がセラチア菌に汚染されていて、
それが点滴液の中に侵入したのが原因のようです。

以下、それについて説明します。

まず、これをご覧下さい。


これが、酒精綿の入った消毒缶です。
プラスチックのタイプの容器もあり、
どちらが使われたかは分かりませんが、
どちらも構造は変わりません。
ガラスのボトルの中に、
消毒液に浸された、
四角く切った、白い綿が入っています。


蓋を開けたところです。
ここから綿を取り出して、
主に点滴をする皮膚の消毒に使うのです。
消毒に使う綿の中で、
何故菌が繁殖したのかは、後で説明します。
取り敢えず、この白い綿の中に、
セラチア菌がうじゃうじゃいた、
とそうお考え下さい。

さて、次の行程です。


皆さんお馴染みの点滴液のボトルです。
実際に使われたのは、
100ml の生理食塩水のボトルですから、
これより小さいものですが、
構造は同じです。
内部はまだ滅菌です。
中は清潔で、菌は存在しません。


ボトルの口を真上から見たところです。
このプルトップを引き上げ、
捲り上げると、点滴の管を刺す、
注入面が現れます。


これが管を突き刺したところです。
事件の点滴は、この中に2種類の薬剤を注入したので、
都合3回、この行程が繰り返された訳です。

よろしいでしょうか。

問題はこの突き刺す操作の度に、
注入面がさっきの汚染された酒精綿で拭かれた、
ということですね。
看護師は消毒をしているつもりで、
実はセラチア菌を注入面に擦り付けていた訳です。
市役所の報告では、「針を酒精綿で消毒した」とありますが、
これでは意味が通らないので、
針を刺す毎に、注入面が拭かれた、
というのが事実だと思います。

これで、点滴のボトルの中に、
セラチア菌が侵入しました。
菌の量はまだ僅かです。
しかし、ここで例の作り置きが行なわれます。

問題の起こった朝には、
前日に作られて、まだ使われていなかった点滴セットが、
20セットその日の分として使われた、
ということです。
12時間以上、菌は点滴液の中で、培養され、
菌にとって快適な環境の中で、
うじゃうじゃ増殖した訳です。
それが直接患者さんの血液に注入されたのです。

亡くなられた方のことを思えば、
軽率なことは言えませんが、
被害はもっと甚大でも、少しも不思議ではない、
と言って過言ではありません。

恐ろしいですね。

さて、最初の疑問に戻ります。
消毒液の中で、何故菌が増えたのか?

1つは、使われていた消毒液の種類によります。
使われていたのは、グルコン酸クロルヘキシジン、
商品名は「ヒビテン」と言います。
しかし、この消毒剤は通常の使用でも、
セラチア菌には無効の場合が多いのです。
菌が耐性を獲得しているのですね。
1998年には、ヒビテンのボトルの中で、
セラチア菌が増殖し、院内感染を起こした事例が報告され、
海外で論文にもなっています。
それを、報告によれば、適正量の20倍以上に薄めて使っていた、
と言うのですね。
これでは、菌を繁殖させるために、
容器に綿を入れていた、と言われても、
仕方がありません。
通常こうした場合の消毒には、
70%のイソプロパノール(要するにアルコールですね)
を用います。
これも、2002年のセラチア菌院内感染事例(大阪の病院)の時、
50%の液を使っていたことが問題となり、
原則70%以上のものを使うように、
改められたのです。
何故そうしなかったのか。
単なる無知からなのか、
それとも他に何か理由があったのか、
今後の捜査を待ちたいと思います。

まだ、説明したいことはあるんですが、
長くなり過ぎましたので、またにします。

でも、最後に1つだけ。
以前のブログで、「ヒビテン原因説」を書いておきました。
勿論書き直したりはしていません。
読んで見て下さい。
http://rokushin.blog.so-net.ne.jp/2008-06-14
結構鋭い指摘だったと思うのですが、
如何でしょうか。

すいません。
自慢するなんて、不謹慎でした。
忘れて下さいね。

それでは今日はこのくらいで。
お休みの方はあいにくの雨でした。
僕と同じように今日も1日仕事の方は、
頑張りましょうね。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。



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