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効く薬と効かない薬 [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

例によって、朝から健診の整理をして、
それから今PCに向かっています。

昨日NHKの番組で、
「非定型うつ病」の話が取り上げられていましたね。
典型的でないうつ病が増えていて、
臨床現場では誤診も多く、
治療の見直しが課題になっている、といった内容でした。

これについての僕の考えは、
少し前に書きましたので、見て頂きたいのですが、
http://rokushin.blog.so-net.ne.jp/2008-05-30
番組で触れられなかったもう1つの背景は、
矢張り薬のことですね。

抗うつ剤を売ろうとする露骨な製薬会社の宣伝が、
「典型的うつ病」以外にも抗うつ剤を飲む患者さんの数を増やし、
薬の弊害に苦しむ人の数を増やしているのです。

抗うつ剤は、基本的には、
「典型的うつ病」以外にはあまり効果はないのです。
それ以外の使用については、
慎重の上にも慎重であるべきです。
特にパロキセチンのような、
1度飲み始めると、離脱の困難な薬については、
尚更ですね。

適切な使用に限れば、
日本の抗うつ剤の使用量は10分の1に減らせる、
というのが僕の考えです。

ところが、今でも大手の製薬会社は、
一般の内科の医者にも、
「うつを疑ったら、取り敢えず薬を出して様子をみろ」
と宣伝して廻っているのです。
学会の偉い先生も、その宣伝パンフレットに名前を載せているんですよ。

何をか言わんやですね。

そんな訳で、今日は幾つかの治療薬の話です。

まずこの写真を見て下さい。

これは、ある50代の患者さんの胃カメラ写真です。
診療所での、実際の写真です。
粘膜が赤くただれているのが、分かりますか。
びらん性胃炎の所見です。

ピロリ菌が陽性で、典型的ピロリ菌による胃炎の所見です。
(ピロリ菌については、前に1度書きましたので、そちらをご覧下さい)
http://rokushin.blog.so-net.ne.jp/2008-05-12

抗生物質を2種類と胃薬を1種類を一週間飲んで、
ピロリ菌の除菌治療をしました。

その半年後の写真がこれです。

別に色を変えて撮った訳ではありません。
粘膜の状態が改善して、
殆ど正常になっているんですね。

どうですか?

これだけビジュアルに効果のある治療も珍しいくらいですね。
ピロリ菌の除菌によって、
胃の治療が革命的に変わった、
というのも分かる気がします。

しかし、この除菌治療でも、症例を選んで行なわないと、
却って、調子を悪くする場合があります。
除菌によって胃酸の出が強くなり、
食道や十二指腸の炎症を起こすことがあるんですね。
特に高齢の患者さんの場合、
前に書きましたように、
80パーセント以上の方がピロリ菌陽性なのですから、
除菌の治療が必要な方は限られています。
そのためには、ちょっと大変ですが、
除菌前に胃カメラの検査で、
胃の粘膜の状態を見ておくことが必要となります。

よろしいでしょうか。

効果のある治療薬として、
これ以外で、すぐに僕の頭に浮かぶのは、
ステロイドですね。

ステロイドと言うと、悪い薬として、拒否反応のある方も多いと思います。

しかし、短期の使用で、これだけ効果のある薬は、
多分他には存在しません。
しかも、作用も副作用も、長い使用経験の中で、
研究し尽くされている訳です。
副作用の殆どは、長期の使用で生じるものです。
短期の使用であれば、これほど安全な薬もない、
と言って過言ではありません。

皆さんは副作用のない薬がいい薬、と思われるかも知れません。
でも、そうではないんですね。
副作用のない薬は、効果もないんです。
これは一枚の紙の裏表のようなもので、
本当にいい薬は、副作用が分かっていて、
それをコントロールすることが出来る薬です。
ステロイドとは、そうしたいい薬の1つだと、
僕は思います。
医者の使い方によって、毒にも薬にもなる、
というのが、今も昔も変わらない、治療の本質なんですね。

今日はちょっと雑駁な、薬についての話でした。
明日は、セラチア菌の事件の感染経路の話を取り上げる予定です。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。






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